経済社会の発展に伴う近年の会計情報利用者の情報要求の多様化は、会計基準の国際的統一化の動きと相俟って、今日、各国の会計基準に大きな影響を及ぼしつつある。しかしながら、各国の会計基準を時代に適合するようにそれぞれ改善し、かつ統一していくためには、まずもって、国際的に承認され得るような会計理論を構築することが不可欠であると考えられる。そして、このような認識に立った場合、世界共通の知識体系である複式簿記を基礎とし、この記録プロセスにしたがって理論展開を図ることは、そうした会計の一般理論を構築するための一つの方法になりうると考えられる。
このような問題意識をもって在来の会計学説をかえりみたとき、著者の目を強く引き付けたのは、George H. Sorter教授が1969年に提唱した「事象アプローチ」と称する会計理論についての新しい考え方である。Sorter教授が事象アプローチを提唱した真の意図は、伝統的複式簿記実践全般についての記述理論の論理的基礎としてインプット理論の重要性を主張すること、すなわち、会計の記録対象としての事象の概念を基点として記述的会計理論の再構築を図ることにあった。
本書ではいろいろな議論を展開しているが、それらの議論を通じて著者が主張したいのは「会計の記録対象としての事象の概念を基点として理論展開を図るインプット理論の重要性」という点である。Sorter教授の1969年の論文はもともとそうした意図をもって書かれたものであったし、この論文の議論内容をそのように解釈することによって事象アプローチは現代の会計理論研究において重要な意義を持つ議論として再評価されうるという点を、本書ではその全体を通して主張している。