本書はドイツを中心にオーストリア及びフランスを含めた資本会計制度について論究したものである。近年、この資本会計制度に関する議論が盛んに行なわれている。日本では平成9年の商法改正によるストック・オプションの導入に伴う自己株式の取得規制の緩和を契機として、それ以降度重なる商法の改正があった。日本の伝統的な資本会計制度は近年において大きく変容したといってよい。
著者はこれまで静的会計論を長年メインの研究テーマとしてきた関係で、資本会計制度に関する研究分野との接点をほとんど有しておらず、直接的な関係は極めて薄い。この分野に興味を持った切っ掛けは資本会計制度の変遷による。日本の資本会計制度の方向が果たして妥当性を有するのか否かに大いに関心を抱いたのである。それを検討するためには、日本の母法であった欧州資本会計制度の現状及び動向を理解し、比較する必要がある。
このような背景から、まずドイツの商事資本会計制度の分析に着手した。その後、税務資本会計制度や出資者借入金の資本化制度、メザニン・ファイナンスの会計等にも範囲を広げて検討を加えた。残された問題点および課題も少なくないが、ドイツ等を中心とする資本会計制度は、今なお日本の会社法を改善し発展させるうえで、示唆に富む内容を包含していることから、この段階において研究結果を整理し、本書を公刊することを決意した。
本書の構成は以下のとおりである。
第1部は、まずドイツの資本会計制度の総論を取り扱う。第2部はドイツ資本会計制度の各論について取り上げる。第3部は負債と資本の中間的な形態としてのメザニンファイナンスの会計について取り上げる。第4部は第1部から第3部にわたってとりあげたドイツ資本会計制度を統括し展望する。補論1ではオーストリアの資本会計制度のうち、商事資本会計制度、税務資本会計制度、出資者借入金の自己資本化法についてそれぞれ論じる。補論2ではフランスの商事資本会計制度について論究する。