昨今、割引現在価値は、財務会計領域においても、経済学(ファイナンス)的立場から論じられることが多くなってきた。しかし、歴史的・理論的・制度的に観察すると、会計学固有の割引現在価値も歴として存在してきた(している)ことが確認される。また最近では、経済的観点(Economic Perspective)を上位におき会計的観点(Accounting Perspective)を下位におく「一元論」(Economic Monism)が優位になりつつあるが、歴史的・理論的・制度的に観察すると、経済的観点と会計的観点の調和を図ろうとする、よって会計学の独自性を保持させようとする「二元論」(Economic-and-Accounting Dualism)の存在も確認できる。
「今」が歴史、理論および制度の上に成り立っていることを前提にすれば、今日的な現在価値観―割引現在価値を経済的評価基準(公正価値評価あるいは企業評価のための一測定技法)と捉えようとする見方―は、その400余年の歴史の中の過渡期的現象あるいは議論の再出発点を提示したに過ぎないと考えられる。逆に言えば、これまでの実証研究の成果では、会計学固有の原価評価(配分思考)と整合的な割引現在価値(正確には、それに関連する利益概念)がいまだ現実的相関性を有していることが確認されているはずである。
近年、企業評価論やDCF(Discounted Cash Flow)の隆盛の煽りを受け、時価評価(価値思考)と整合的な割引現在価値だけを「是」とするような傾向がみられるようになった。このような時流に逆らうようであるが、以上が本書全体を貫く認識であり、会計学固有の割引現在価値および二元論の存在意義を再確認することが本書の主目的である。