この半世紀ばかりの間に会計理論は、大きく変わった。それは、損益計算書アプローチの理論から貸借対照表アプローチの理論への転換として説明されている。損益計算書アプローチの理論は、収益と費用との適切な対応によって利益を確定しようとする。貸借対照表アプローチの理論は、資産と負債の認識と価値評価に基づいて利益を確定しようとする。会計理論は、歴史的に、損益計算書アプローチの理論から貸借対照表アプローチの理論へと大きく転換を遂げた。この転換のプロセスにおいては、理論や概念の継承と発展は見られず、そこでは断絶した転換があるのみである。このような理論変化を反映して、会計のテキスト等では、重要な概念として説明されていたものが、新しいものに取って代えられると、過去の概念は無視され、忘れ去られてしまう過程が進行する。
本書は、このような会計理論の変化の意味を、会計理論がもつ制度的性質においてとらえ検討したものである。会計の理論は、その国の会計制度の仕組みと結びつき、制度的な機能を果たすものとして成立し変化する。会計理論の制度性に焦点をあてると、理論変化になぜ断絶的な転換が生まれるのか、またなぜ会計理論が経済危機と会計改革に促されるようにして形成されるのか、このような疑問を解き明かす糸口を得ることができる。