羊を一匹ひつじを二ひきひつじをさんびきひつじをよんひき
たった一字の掛けちがいで「存在」が「対象」とされる危うさ。
それはいつどこにでも遍在する。
2021年刊行の『遣らず』につづく第五歌集。
これまでは歌集刊行ののち、長い空白が置かれたが、
今回は前集との「連星」とも言える歌集である。
【収録歌より】
なんだこのおほきな足どこにもゐる人なんですが気になりますか
あいつださうだあいつださうださうださうだあいつださうだあいつだ
学歴つてあんたジープから投げられたペンを拾ひはしたけどな
おほきなものを匿すのにここがつかはれる森よりはちひさいもの
ゆふづきといふ言葉はありますか争つてゐるうしろのそらです
「〈羊が一匹ひつじが二ひき……〉眠りに誘う呪文の「が」を「を」に替えてみる。
とたんに「存在」だったものが「対象」に変わる。
たったひとつの助詞が揺らぐそれだけで状況は変わってしまう。
んな危うさといつも隣りあわせている。」
(あとがきより)
装幀=平井弘
装画=平井えり
制作協力=岡デザインオフィス