第四代ブラウン大学学長を務めたフランシス・ウェーランド(Francis Wayland)の“The Elements of Political Economy”は1837年にアメリカで初の経済学の専門書として出版され、国内外を問わず広く読まれた。日本では1867年に福沢諭吉が慶應義塾の教科書に定め、明治期の「ウェーランド・ブーム」を牽引した。
代々長崎の唐通事を務めた家系の何礼之は、ウェーランドが講義用に編集した簡略版テキスト“Elements of Political Economy: Abridged and Adapted to the Use of Schools and Academies”を1872年に『世渡の杖── 一名経済便蒙』として翻訳。知識人だけでなく市井の商人を読者として想定し、誰もが読みやすい経済書を目指した。
本書は何礼之訳『世渡の杖── 一名経済便蒙』(正編巻之一、二)の解題と影印・翻字を収録。日本資本主義経済の黎明を探る歴史的資料。