ある一人の人間が自分自身の「痛み」から目を逸らすことなく,それを持ちながら生き抜く時,そこに全ての人の「生」に通じる何かを見出すことができるのではないか。(本書第1部より)
戦争・抑留体験を忘れ去ることなく生涯描き続けたシベリア帰りの画家香月泰男。その作品世界に真摯に向き合った心理療法家が見出したものとは
未来に語り継いでゆきたい魂の記録。
画家・香月泰男(1911-1974)は,満州での軍隊生活ののち,シベリアで抑留生活を送った。帰国後,その過酷な経験を『シベリヤ・シリーズ』57点の作品として遺した。
本書は,心理療法家であり深層心理学の研究者でもある著者が,香月の生涯と作品世界に向き合い,その個人的な体験を丁寧に追うことを通じて,「我々の物語」を探ってゆく試みである。
香月は生と死,喪失,孤独,哀しみの体験を深化させることで生き抜いた。彼の作品世界に深く心を開くとき,我々もまた自らの「生」と「死」を見つめることになるだろう。