見えない傷を抱える子供たち。学校に壊される教師たち。教育現場の「生きづらさ」を社会の問題として問い直す──。
いじめ、不登校、トラウマ、教員のメンタル不調。学校で起きるさまざまな「生きづらさ」の背景には、個人の問題では片づけられない社会の仕組みや課題がある。
その実態を見つめ、声にならない声に耳を傾けながら、「何が起きているのか」「何ができるのか」を問いかける。教育関係者だけでなく、今、教育現場で起きていることを伝えるすべての人に開かれた全3巻の教育ノンフィクション。
第1巻となる本書は、2021年に北海道旭川市で発生した「旭川いじめ凍死事件」をテーマとする。この事件は、日本社会に大きな衝撃を与えた。中学生であった廣瀬爽彩さんが、壮絶ないじめと、その後の周囲からの無理解、制度的な放置の中で命を落としたこの事件は、単なる学校内のトラブルにとどまらず、子育て、発達障害、福祉、教育、地域社会、インターネット、司法・行政といった多くの領域にまたがる複合的な課題を内包している。
現在、子どもたちが生きていく環境は、かつてないほどの複雑さと脆弱さを抱えている。SNSによる誹謗中傷、発達特性への理解不足、家庭内の孤立、学校現場の人手不足、そして福祉や医療などのセーフティネットの機能不全。こうした一つひとつの問題が見えにくい形で連関し、「生きづらさ」として子どもたちを包み込んでいる。
この事件の詳細を検証した「再調査報告書(公表版)」は367ページに及ぶ膨大な資料であり、そこには彼女の死の背景にあった社会の綻びが克明に描かれている。しかし教育現場からの十分な検証の声は十分ではなく、むしろ被害者である廣瀬さんへのバッシングや「被害者にも非がある」という空気が根強く残っている現実がある。
報告書が伝える廣瀬爽彩さんの命と声なき声を手がかりに、子どもたちの「生きづらさ」に寄り添い、社会システムのどこに欠陥があったのかを可視化。子どもたちが最悪の結果を選ばずにすむ社会の創造に向けて15の提言をおこなう。