中世盛期北フランスの諸侯権力

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権力を確たるものにして、支配者として君臨するための戦略とは――叙述史料から読み解く社会的・文化的コンテクスト
11〜12世紀、王権の支配が及ばないフランスの各地方は世襲の支配者たる諸侯に割拠されていた。彼らはしばしば強大な政治的・軍事的影響力を発揮したが、その裏には、自身の権威を地域社会に浸透させるために人々の記憶や意識に働きかけ、特定の筋書きに沿った「語り」による記憶の統制を通じて支配者としてのイメージを確立させるという戦略があった。時に宗教的権威を得ることをも画策した諸侯家系と在地各層との関係性を解明し、北フランスを中心とした諸侯権力の特質を政治文化的な面から明らかにする。
目次
はじめに 

第I部 フランス中世史学における諸侯 
第1章 フランス中世史学における諸侯 
1)19世紀の研究史―「カロリング的秩序の破壊者」としての諸侯―
2)20世紀前半―実証的研究の進展―
3)20世紀半ば―転機―
4)20世紀後半―「カロリング的秩序の残滓」としての諸侯―
5)20世紀末以後―制度史的研究からの脱却―
6)本書の研究手法

第II部 「歴史」を編む諸侯権力―「記憶」に基づく共同体創出の試み―
第2章 アンジュー伯家の事例、および予備的考察 
1)アンジュー伯家とは 
2)アンジュー伯家の史料 
3)初期の叙述の構造―戦争の連続として語られる「歴史」―
4)叙述の変遷―イングランド王としての利害の流入と不変の構造― 
5)テクストの二重性―誰が「歴史」を読む/聞くのか―

第3章 ノルマンディー公家の事例、および両家史料の総合的考察 
1)ノルマンディー公家とは 
2)ノルマンディー公家の史料 
3)初期の叙述の構造―対峙するデーン世界とフランキア世界―
4)叙述の変遷―排他的な「ノルマン人」意識の表出―
5)「記憶」の収集(両家史料の総合的考察1)―誰が「記憶」を語るのか―
6)「記憶」の編集(両家史料の総合的考察2)―「記憶」に基づく共同体創出の試み―

第III部 “聖なるもの”と諸侯―聖性をめぐる諸侯権力の戦略―
第4章 諸侯にまつわる奇跡譚―その形成と流布について―
1)ナント伯家と『ナント年代記』 
2)ナント伯アラン・バルブトルトの奇跡譚 
3)記憶を媒介するもの―教会施設に組み込まれたアランの記憶―
4)奇跡を語り継ぐ者たち―アンジュー、ノルマンディーの事例―
5)奇跡を伝えるモニュメント―諸侯権力による教会へのパトロネジと奇跡譚の形成―

第5章 “聖なる諸侯”の創出―諸侯に投影された支配者像の考察―
1)「祭司」としての諸侯―7王国時代の君主観念との共通性―
2)「殉教者」としての諸侯―アングロ=サクソン的聖王像の導入― 
3)敬虔なる諸侯―教会改革的な理想像の受容―
4)諸侯権力によるキリスト教的正統性の主張―北海~ドーバー海峡周辺世界に臨んで―

結論 ―「自らが何者であるか」を知らしめる権力―

おわりに

註/付録 各家系図 、城主家系の婚姻関係/参考文献/索引
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