プロローグ
2012年の秋,ある新聞の朝刊に「発達障害,育て方のせいじゃない/周囲の理解・支援必要」という記事が掲載されました.記事は,「生まれながらの脳の機能障害が原因とされる子供の発達障害,正確な知識が広まらず,育て方が原因といった偏見も根強い.悩む親たちが前に進むには,周囲も含めた正しい理解と支援の充実が欠かせない」と結んでいます.
最後まで記事をしっかり読めば,周囲の理解や支援が必要という意見には,概ね賛成なのですが,どうも胸がすっきりしません.子供の発達には,もともと持って生まれた遺伝的要因と,生まれた後の環境的要因の2つが関与しています.「発達障害」は,本当に「育て方のせいじゃない」のでしょうか.
育て方のせいじゃない,つまり親や周囲の環境のせいではないとすると,主な原因は,子どもがもともと持っている性質ということになるのでしょうが,本当にそれでいいのでしょうか.
発達には,常に一貫性と多様性が混在し,必ずしも教科書や育児書どおりに普遍的に発達するものではありません.医療や福祉の現場においては,子どもの発達を評価する際に,標準的な範囲から逸脱しているかどうかばかりに意識がいってしまいがちですが,本来,標準化値からの逸脱こそが発達といえます.
子どもの行動が標準から逸脱していた場合,それを頭から障害と捉え,治療の対象として,問題を軽減しようとするアプローチには限界があります.
わが子だからこそ,自分が担当した患者さんだからこそ,親が,周囲が責任を持ってになうべきことがあるのではないでしょうか.発達に問題を抱えた子供たちのリハビリテーションには,彼らの問題点を指摘し,お尻を叩いて行うものばかりではありません.彼らが安心して学び,幸福に働き,健康に生きるために,われわれ自身が,今日明日からできること,それを一緒に考え,実践に移そうではありませんか.
2013年6月
橋本 圭司