フランス初等教育史1815-1830

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『フランス教育史18151830』A5判上製810頁神山榮治著
民衆教育の基本である初等教育の仕組みが構築される19世紀前半は、帝
政、復古王政7月王政の3期に分けることができる。第1期(帝政)の政策課題
の中心にあるのは国家的公教育体制、すなわち大学の樹立であり、大学の配下
に置かれる「民衆の小学校」の制度的創出であった。
1815年、「反大学」世論はボナパルト遺制を弾劾したが、「教育の自由
」の名において「国家による教育」の原則そのものを否定するものではなかっ
た。大学は「フランス大学」として再興し、ルイ18世の時代に堅固な土台を
築いた。
フランス最初の初等教育憲章と目される1816年勅令は、私的、地方的、
慈善的率先を奨励し、小学校を督励する「大学が掌握する装置」としての画一
的な制度の樹立を目指した。大学は政府と歩調を合わせて憲章の執行に尽力し
、所期の装置に権威と実在の威力を与えた。民衆教育は、私人、団体、教会の
事業も含めて大学の傘下に入って行くことになる。
1816年勅令が公布されたとき、パリはイギリス教育方式の導入をめぐっ
て対峙し、議論を戦わせていた。自由主義的世論は「子どもが子どもに教える
」方式の宣伝・普及に邁進し、国家が加勢した。逼迫している地方都市にとっ
ても、ランカスタ方式は、王政的秩序と国富に貢献する無二の資材であった
。教会世論はラ・サル方式を服膺する修士会の学校を支援し、対抗した。都
市を舞台とする学校戦は、政治的闘争の恵沢に浴した。
公役務に奉仕する大学の組織的関与はブルジョア的野心の成就に不可欠の「
国家の装置」として指導的世論、特に「分限をわきまえた市民、勤勉な働き者
」の育成を望む博愛的世論に受け入れられた。不羈独立の精神を生命とする修
道会も国家のお墨付きによって得られる実益を前にして苦渋の選択を余儀なく
された。
大学は、ラ・サル「大修士」の補完的役割を果たす、村の教師たる「小修
士」の養成を目的とする各地の新型修道会の開設を奨励した。権力に反逆する
ラムネでさえも、脆弱な財政基盤を補強し、免役の特権を手にするには、会憲
を大学の俎上に乗せ、王の認可を得なければならなかった。
既存の「小さな学校」の1816年型小学校への転換は一朝一夕に成るもの
ではない。公的職責を果たす新型教師が一斉方式に従って教育する、それが「
国家の小学校」の本来の姿形である。子どもは教科ごとに同一の教科書を用い
る。大学が当初から施策の方針を立て実行したのが、伝統的個別教育方式の漸…
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