歌人・コラムニスト、「伯爵と呼ばれる男」北夙川不可止の、『ぬばたま』に続く第二歌集。先年逝去した母を悼む歌を冒頭に、続いて若き日に詠んだ獄中歌を収録。
《自分の意思とは関係なく幽囚の身となり、殆ど誰とも話す機会を奪われた結果、初めて自らの言葉が「作品」となって溢れ出てきた、というわけだ。》(p.36)
第二歌集『ねこのあたま』には、時の流れによる空白を埋める意味合いも込めて、歌人によるエッセイを挟んでいる。上記はその一節。獄中の暮らしや歌詠みのきっかけ、短歌結社のありかた、など、ふだん短歌に縁遠い読者にも興味深い。
「題に騙されて可愛らしい内容や猫の登場を期待してもだめだ。第一歌集の愛読者は落胆するかもしれないが、実はこの『ねこのあたま』こそがホンモノの北夙川不可止であり、短歌の真髄を究めている。」(歌人・小川優子によるあとがき「『ねこのあたま』に寄せて」より)
かつて、「アララギ」誌上に掲載される北夙川不可止の歌を心待ちにしていた、と述懐する小川優子氏は、
「「独房」「鉄格子」「獄」「金網」などのパワーワード」「歌材が強烈なだけではない。単語の強さに負けないこの叙情と品格は何なのだろう。重厚で浮ついたところのない詠みぶり」「詠おうとする対象にありがたみを深く感じていなければ描写は疎かになる。しかし、不自由な獄中生活が若き歌人の感性を砥ぎ、忽ちにして盤石の描写力を身に着けさせたのであろう。」(同)
と、その異彩を放つ言葉の数々に魅了されたことを述べている。