かつて、北海道の農家には農耕馬がいた。その農耕馬などの家畜売買に携わっていたのが馬喰である。馬喰は農民を騙して儲けていたと言われるが、その実態は? 本書は、農家出身の著者が、北海道で農業の歴史が古い南西部の4町を対象として、馬喰の活動実態をフィールドワークを含めて調査・研究したものである。
著者が総括した馬喰問題の本質は以下の5点。
1.馬匹取引をめぐる馬喰と農民との間にある「情報の非対称性」。馬喰は農民が馬匹についての知識が乏しいことを取引に利用していた。
2.馬匹の売買価格の交渉に使われる方法の特殊性と不公平さ。価格交渉には、馬喰同士が帽子や布、座布団等で手指を隠した状態で行う情報遮蔽性が高い独特の方法があった。
3.馬喰による市場外取引の横行。市場外取引とは、公的な家畜市場ではなく、馬喰が各農家を訪問する形で行う「庭先取引」や「厩先取引」のこと。公的監視の目が行き届かない取引はあらゆる面において馬喰に有利であった。
4.馬喰による市場外取引行為に対して、行政が有効な歯止めをかけることができなかったこと。
5.馬喰同士の力関係の差による問題。馬喰には一種の徒弟制度のようなものがあったと思われる。また、零細規模馬喰は大規模馬喰に対して弱い立場にあった。
本書では馬喰による不公正な取引の実態と共に、これまでほとんど言及されてこなかった、馬喰の正の面にも光を当てている。