名もなき若者たちの声が、80年の時を超えてよみがえる。
戦後80年企画として2025年3月に刊行された旧版『光海軍工廠の日記』は、新聞・テレビなど多くのメディアで紹介され、発売後数ヶ月で完売しました。読者を惹きつけたのは、軍事機密に覆われた光海軍工廠の内部で、若い女性・岩脇テルが綴った「戦時下の生の声」が、驚くほど鮮明に息づいていたからです。
そして今回、旧版を大幅にバージョンアップした新刊となりました。判型を拡大し、第1章を再編集して簡略化する一方で、新たに「第4章・同時代の証言」を収録しています。
光海軍工廠関係者たちが少部数のみ発行した幻の会報『平和の光』に記された進駐軍との邂逅、空襲の惨禍、慰安施設計画の証言。そして旧版の刊行後に寄せられた新たな記憶の証言や、終戦後に残骸となった工廠が、戦後日本の高度成長を支える原動力へと転じていく秘話など、多種多様な証言を収めています。
このため新版では、光海軍工廠に関わった人々の声が重なり合い、テルの日記は一人称の記録を超えて、「集合的な戦争体験」へと立体的に広がっていきます。
戦時下の恋、仕事、恐怖、疲労、そして日常のささやかな喜び。過酷な状況でテルが書き残した日々は、戦争を〈遠い歴史〉ではなく、〈そこに生きた人間の時間〉として読者に迫ります。 名もなき人々の声こそが、戦争の実相をもっとも雄弁に語りはじめます。
本書は、失われつつある戦争の記憶を未来へ手渡す、かけがえのない歴史資料です。