長州戦争に敗退,維新後に苦難の再出発を余儀なくされた豊津藩(旧小倉藩)は,藩校育徳館を藩再建の拠り所にしつつ,反骨と情念に溢れた独特の精神的風土を醸成した─。堺利彦をその先駆とする葉山嘉樹や鶴田知也らの思想・文学・社会主義運動の現代的意義と旧制豊津中の学校文化を解明する。
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【まえがきより】
堺利彦は、二〇世紀初頭の平民社時代からの「社会主義」の先駆者であり、一九二〇年代から『文芸戦線』派プロレタリア作家として活躍した葉山嘉樹と鶴田知也は、その思想、文学、運動を継承した。
本書は、この一〇年間の三人に関する顕彰と研究の記録などを収めた三人の会創立七〇周年の記念出版である。第Ⅰ部 葉山嘉樹、第Ⅱ部 鶴田知也、第Ⅲ部 堺利彦、第Ⅳ部 錦陵人物誌の構成とした。第Ⅳ部と本書サブタイトルの「錦陵(きんりょう)」は、堺利彦、葉山嘉樹、鶴田知也を始め、本書に登場する多くの人々が学んだ旧制豊津中学校(戦後の福岡県立豊津高等学校、現在の育徳館中学校・高等学校)の愛称であり、一八六九(明治二)年に「豊津」と改称される以前の旧地名、豊前国仲津郡錦原(にしきばる)に由来している。