分析哲学と文化をつなぐ哲学雑誌「フィルカル」の最新号(Vol. 11, No. 1)。
特集「肉食の倫理」では、「近代日本人の肉食倫理思想」(上田 遥)、「ヴィーガンというマイノリティになる」(竹下昌志)、「培養肉は種差別規範を揺さぶるか」(高江可奈子)、「どういう仕方でなら食べられて良いのか」(太田和彦)と、私たちの生活に埋め込まれた「肉を食べる」ことを、近代日本や技術といった様々な観点から問い直します。また、翻訳記事「肉食者問題」(M・プラント)は、肉食の不正と人命救助の間の緊張関係を暴きだす論考です。訳者である石原諒太・中村貴行による解説付き。
特集「アルヴィン・ゴールドマン」では、幅広い分野で活躍するも日本国内ではいまだ広く知られていない、2024年に逝去した哲学者ゴールドマンにスポットライトを当てました。「ゴールドマンの行為論について」(佐藤広大)、「ゴールドマンの他者理解論」(藤原諒祐)、「Alvin Goldmanと社会認識論」(飯塚理恵)、「ゴールドマンの応用社会認識論」(山田圭一)、「集団の信念の正当化に関する信頼性主義理論」(飯塚 舜)と、行為論、心の哲学、認識論の側面から、ゴールドマンの多面的な姿に迫ってゆく特集です。
「哲学への入門」のコーナーでは本号から、石原諒太・佐々木 渉 両氏による死の哲学入門を全4回にわたって連載していきます。本号に掲載の第1回目は「なぜ死は死ぬ当人にとって悪いのか?」と題して、英語圏において盛んに繰り広げられている死の哲学の論争に、「死の悪さ」という切り口で、皆さまを手取り足取り導きます。
投稿論文は、「作者の意図への配慮は西洋絵画修復を正当化しうるか」(大川柚佳)を掲載。絵画の修復という問題に対して、従来提起されてきた作者の意図をめぐる様々な立場を批判的に検討することで、修復実践の場における作者の意図の扱い方のあるべき形を描き出していく、たいへん緻密な論考です。
そのほか、哲学の研究者たちが自身の海外留学の体験をつづったコラム特集「留学体験記」、研究者の生活やこだわりに触れられるリレーコラム「研究者の楽屋裏」に、注目の書評1本が加わって、本号も非常に充実した誌面となっております。
専門家がつくる哲学誌フィルカル、今号も哲学と文化が織りなす《今》を伝えます。