イランを知る その誇りと抵抗

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この本は米国一辺倒の型にはめられたイラン観から離れて、その民族文化と風土が物語るイラン人が共通に抱く強い民族情念の源流を辿ります。 著者は20代であった1980年代を通じ、ヨーロッパ・ギリシャから中近東を経てインドへ至る陸路を数往復し、その間、イラン・イラク戦争当時のイランへの入出国をしばしば繰り返していました。 1979年のイスラム革命後の混乱とイラク戦争、当時国内外に大きな緊張と苦難を抱えていたイラン。 著者はその様な世相の中でイラン人の高い文化性と、その背景に存在する民族の強い誇りと矜持の存在を次第に知っていく事となります。 

2025年の今に始まった事ではありませんが、イスラエルとの反目、紛争で世界中の耳目を集めるイラン。 著者は以前よりイラン関連の報道に関してその一方的見解と政治的宣伝、浅薄な決めつけを強く感じていました。 実はイラン人は米国政府の傲慢さは憎んでもアメリカには強い興味を持っている社交家です。著者はミサイル数の比較とか、シーア派を追うだけではイランの姿は見えてはこないと主張します。 ましてやイスラム革命と大使館人質事件というフィルター越しのイラン観にあるのはステレオタイプ化と近視眼でしかありません。 まずイランの底流にはペルシャから続く長い歴史上で築かれたタフな現実対応力、シルクロードの中央にペルシャ語文化圏を築いた壮大な文化力、それらの上に築かれた強固な誇りと侠気があります。 残念ながらその歴史の源流を辿る報道は皆無です。
19~20世紀にかけての英露による搾取、そこから立ち上がった民族の自決こそが現代イラン国家の原点です。 しかし1953年、石油利権の独占を狙う米国の謀略によるクーデターにより憂国の士であったモサッデク政権が倒されました。 更に超親米・傀儡のシャー政権を誕生させて一部階層への富の偏重が極まる一方、不正義と不平等を嫌うイラン大衆の憤懣が爆発したのが、一般民衆によるイランイスラム革命であり、その生真面目な民族風土性を利して宗教的陶酔の下にまとめあげたのがホメイニ師でした。 
ところがその結果「こんな筈ではなかった」という多くの国民の憤りは国内に充満して現在に至ります。 但し、そこで見落とすべきでないのは、現政権派も反体制派もイランという民族風土、文化性の中に現れた一現象、サイコロの表と裏、いわば現政権は鬼っ子だという理解が必要だと著者は述べています。 多くのイラン人ににとり脅しや籠絡は侮辱であり、変革とはすべて自らの手によるものでしかない、 だからこそ外部からの強烈な経済制裁にも社会は耐えられてきたのです。
誇りある多くのイラン人にとって自らの歴史的文化性や主張、権利を国際社会と共有したいと言う思いは非常に強い筈です。 本著では米国・イスラエルによるプロパガンダや型にはめられ偏重した視点とは一線を画し、あくまでもイランの民族文化と風土の匂いの源流を辿る事で見えて来る、彼等の誇りと主張の源流を追い求めます。それを知る処にこそ新たな対話と世界の可能性がある事を提言します。
 
目次
第一章 イランと私
「イラン・アンタッチャブル」「イランとの出会い」「陸路旅から見えた視点」
第二章 記憶の残照 1982~1988
「前夜」「戦時下のテヘランで」「チャイハネ(茶店)」 「イランはミヤーン」と「イランはイェーキ」「ベファルマイードゥ」と「ベバフシドゥ」「或る日のチャイ」「ハザラ人とアフガニスタン」「拝火教(ザルドシュト)」「アシュラに込められたイラン人の民族感情」「砂漠の大海を渡る巨船モスリムとラマダン」「山と火 クルディスタン」「拘束」
第三章 イラン2500年を疾走する
「古代オリエント文明を生んだ風土性」「イラン人は何処から来たのか」「ペルシャの光 アケメネス朝の統一」「パルティア王国を経てササン朝ペルシャへ」「アラブ・イスラム軍によるササン朝滅亡の悲劇」「イラン民族の伝統と心を守り伝えたペルシャ文学の力」
「トルコ、モンゴルによる被支配時代とイラン人のしたたかさ」「サファビィー朝の出現【世界の半分】と謳われた都 イスファハン」
「英露列強の威圧と搾取に対する民族抵抗の夜明け」「二度の世界大戦、東西冷戦、石油と列強、そして民族自決」「超親米パーレビ政権打倒によるイラン・イスラム革命」「ポスト・ホメイニの30年」
第四章 イランをどう見るのか
「イランという民族文化気質」「米国による無秩序な中東政策を問う」「イランだけを一人悪者にして全てを終わらせる時代は終わった」
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