本書は、症例を用いて一般の人にもわかりやすいように記載した、うつ病理論書である。
《自殺》 義理がたい人が自分を生きずに他者を生きようとする生き方は、「滅私奉公」に繋がる。そして「奉公」は過労に行き着き、過労から疲憊うつ病になり、「滅私」は死に行き着く。自殺しないため、自殺させないためには義理を理解しなくてはならない。
《昇進うつ病》 義理がたい人は他者を生きるために自分を抑圧しているので、〝長〟のついた地位に昇進すると、決断や命令ができずに困り果て、うつ病になることがある。これを昇進うつ病という。
《メランコリー親和型性格》 テレンバッハが提唱したメランコリー親和型性格は、「日本風にいうと律儀で義理がたい人」のことである。よって義理がわかれば、メランコリー親和型性格を理解できるようになる。
《対象喪失》 フロイトは、メランコリーというのは「愛する対象の喪失に対する反応である」といっているが、義理がたい人は他者を生きているので、その大切な他者を失うと、対象喪失してうつ病になることがある。
《新型うつ病》 義理がたい人は自分本位に生きずに他者本位に生きようとするものだが、戦後七十年たって義理が廃れてきて、他者本位に生きることを嫌い、自分本位に生きようとする人が増えてきた(このことは義理チョコを贈る人が減って、自分チョコを買う人が増えてきたことからわかる)。この自分本位な人が、自分本位に生きられないと新型うつ病になるのである。
《あまえうつ病》 「あまえ」というのは他者に自分を生きさせて、その自分を生きてくれている他者にあまえるわけだが、その他者がいなくなると、うつ病になることがある。これを、昔テレビで気象解説をしていた倉嶋厚さんの『やまない雨はない』で説明する。このあまえうつ病のメカニズムは、ルネ・スピッツのアナクリティック・デプレッション(依存的抑うつ)と同じである。
《執着性格者のうつ病》 執着性格というのは下田光造が提唱した躁うつ病の病前性格のことで、これを英国留学中にうつ病にかかった夏目漱石の『夢十夜』の第二夜の夢で説明する。