英国の最も西のはてにある、絶海の孤島「セント・キルダ」
この島は、かつて世界から完全に孤立していた島だった。
写真家の加藤秀が全島避難から90年を経たセント・キルダを撮影した貴重な写真作品を収録。
日本初となる、ユネスコ世界複合遺産セント・キルダの写真集。
“世界のはての島”
セント・キルダはスコットランドの西岸沖に連なるアウターヘブリディーズ諸島の中でも最も西の果てにある群島で、4つの小島と巨大な離れ岩(海食柱)で構成されている。島には一年中暴風が吹き、荒波と海からそびえ立つ断崖絶壁で大きな船は接岸出来ず、現代ですら嵐の多い冬はもちろん、夏でさえ天候によっては近づくことが出来ない。
小さな島に、平地は少なく土地は痩せ、強風で木は1本も育たず、海は荒れ漁業も出来なかった。だが、そんな過酷な自然環境にあっても、ここにはかつて人が暮らしていた。少なくとも4,000年以上前からこの島に根づき自給自足の暮らしを行い、質素な暮らしながら誰もが互いに助け合い暮らしてきた。電気も法も通貨も貧富の差もない、外界から遠く隔絶した小さな世界には不便ではあるけれども心豊かな暮らしがあったという。
だが、その暮らしは終わりを迎える。1930年に最後の島民36人全員が島を捨てスコットランド本土へ避難し無人島となった。
その原因は、産業革命以降の観光客と疫病という文明社会の干渉によるものだった。
また、セント・キルダは世界有数の海鳥たちの巨大コロニーとして学術的にも貴重な島として知られている。
現在、セント・キルダは群島全体が英国で唯一のユネスコ世界複合遺産(自然遺産、文化遺産の両方)に登録されており、世界的に大変貴重な保護遺産となっている。
本著では世界遺産セント・キルダの荒々しくも美しい自然と、かつて暮らしていた人々の痕跡を写真作品を通して紹介する。