皮膚病診療2025年4月号
特集 手こずる皮膚病とありふれた皮膚病
(山本 俊幸 編集委員)
いまやバイオ製剤は乾癬やアトピー性皮膚炎をはじめ,その他の炎症性疾患にも広く使われている.外用療法でなんとかするのが皮膚科医としての腕のみせどころ,などというと時代遅れの感すらあり,バイオ製剤をたくさん使う皮膚科医がもてはやされる時代となった.強力な武器を使えば研修医でも皮膚症状を簡単によくすることができる.昔散々手こずっていた症例は,現在“治る”疾患となった(根本的ではないにせよ).
バイオ製剤に関していうと,患者数を鑑みて製薬会社が臨床試験を組める疾患に関しては適応拡大が見込めるが,たとえば扁平苔癬や毛孔性紅色粃糠疹はTh17が関与するとされバイオ製剤が効くのは理論的に容易に考えられても,臨床試験が組めるほど症例が集められるかといった問題点が出てくる.
そうなると,いまの時代であっても手こずる皮膚病にはどんなものがあるか,治療のアンメットニーズを考えると,バイオ製剤の保険適用をもたない疾患にどう対処するか,という課題が浮き彫りになってくる.思うところは皆同じで,昨年の日本皮膚科学会中部支部学術大会のシンポジウムで,「治りにくい皮膚疾患・どうする?」が企画された.本誌の年間テーマは,前年の3月に概要を決定するので,すでに「手こずる皮膚病」と決まっていたが,真似したと思われるのも嫌なので,慌てて「手こずる皮膚病とありふれた皮膚病」に微修正した.
本特集の巻頭では,皮膚科医が診察をおろそかにしがちな口腔病変として扁平苔癬を取り上げ,治療法について解説いただいた.また,疣の治療は筆者が皮膚科医になったころと変わらず,液体窒素圧抵が主流で延々時間がかかる.痛いので子どもの患者にも気の毒である.手湿疹は,同じ病名でもその症状はピンからキリまであり,重症型は漫然とステロイドを塗っていても軽快しない.これらの疾患についてエキスパートから解説いただいた.また,治療ではないが,ありふれた症状として臍の皮膚病も取り上げた.
「臨床例」は,ありふれてはいるが治療に難渋するもの,現在でも治療薬が昔と変わらないもの,診断に苦慮したもの,治療がうまくいったものやそうでなかったものなどに加え,ありふれた症状が他疾患に付随してみられたものなどが並んでいる.裏技的な治療も入れたかったが,学会抄録からは探せなかった.
今回取り上げることができなかった疾患にも治療に手こずるものは多々ある.本号が読者のお役に立てば幸いである.