皮膚病診療 2025年7月号
特集 光と関わる皮膚疾患
(久保 亮治 編集委員)
遺伝性疾患の診療を専門にしていると,光や紫外線についての正しい知識を必要とする場面に多く遭遇する.ポルフィリン症における紫から青色領域(Soret band)を中心とした光の防御指導,色素性乾皮症における紫外線防御指導,眼皮膚白皮症における適度な紫外線防御指導(というよりは,紫外線を避けすぎてビタミンD不足にならないように,日陰で紫外線散乱光を十分浴びることの指導など,必要量の紫外線曝露指導)などである.医療者の指導はしばしば紫外線発がんリスクを避けることを強調しすぎる傾向にあり,小児のビタミンD不足や,外遊びを通じた運動発達や社会性の発達の阻害要因となってしまうことは,とくに気をつけなければならないポイントである.紫外線は避けすぎてもいけないのだ.
一方,紫外線防御指導が忘れられがちな疾患もある.たとえば結節性硬化症である.結節性硬化症で紫外線防御と聞いて,ピンと来ない方も多いかもしれないが,結節性硬化症に合併する顔面の血管線維腫は,紫外線によるセカンドヒットが主な発生要因であり,サンスクリーン指導が腫瘍の発生予防に重要である.
さて,本号では紫外線防御の再考についての総説を上出良一先生に執筆いただいた.ぜひ参考にしていただいて,バランスのとれた患者指導に活かしていただければと願う.また,さまざまな光線過敏症,光アレルギー接触皮膚炎,日光蕁麻疹などの症例,総説を蒐集させていただいた.執筆者の先生方にこの場を借りて御礼申し上げたい.
最後に1つ,あるポルフィリン症患者のエピソードを紹介しておきたい.なんとこの方,サーファーなのである.最初は日焼けして大変なことになっていたそうなのだが,真っ黒に焼けてしまったら,その後は痛くならずにサーフィンを楽しめることに気づいたとのことであった.メラニン色素は紫外線だけでなくポルフィリン症の作用波長の可視光も防御してくれるので,道理なのである.そこで彼が閃いたのは,日焼けサロンで先に肌を焼いておいたら,最初から痛くならずにサーフィンできるのではないか?ということで,実際に日焼けサロンで黒く焼いてからハワイに行ってサーフィンしたら問題なくできた,ということをおっしゃっていた.病気に負けないとはこういうことなのだと思った次第である.リスクを強調するばかりでなく,いかに充実した人生を送れるように寄り添ってサポートするか,私自身の診療に対する向き合い方にも一石を投じていただき,出会えたことにずっと感謝している.