特集 瘢痕を科学する
(山本 俊幸 編集委員)
外傷瘢痕上には実にさまざまな皮膚疾患がみられる.炎症性疾患だけでなく,腫瘍性病変もみられる.代表的な疾患をあげると,乾癬,扁平苔癬,サルコイドーシスが思い浮かぶが,湿疹性病変であってもよい.また,腫瘍を例にあげると熱傷瘢痕癌が有名で,III度の深いやけどが何カ月もかかって瘢痕治癒した部位に,何十年も後になって有棘細胞癌が生じることが多い.しかし瘢痕治癒にまで至らない浅いやけどの部位にも良性・悪性の腫瘍が生じることがある.
本号では,外傷後の創傷治癒機構のメカニズムについてepigeneticな観点からAIM2の役割を中心に夏賀 健先生に,また,真皮の線維性疾患の代表である全身性強皮症の病態メカニズムを創傷記憶の観点から,浅野善英先生に解説いただいた.どちらも最先端の話題なので病態の理解は易しくないかもしれないが,表皮の疾患,真皮の疾患について“記憶”という視点から病態や現象をあれこれ考えてみることは,ほかの疾患にも応用できるかもしれない.ほかに,肉芽腫性疾患としてサルコイドーシスを取り上げてある.サルコイドーシスも外傷瘢痕との関連が深い疾患である.また,「統計」では外傷瘢痕上に貨幣状湿疹が生じた症例を集計した.日常診療でしばしばみかける現象であるが,報告は意外と少ない.
「臨床例」には,壊疽性膿皮症とパテルギー,放射線皮膚障害,三叉神経第一領域に生じた帯状疱疹後の肥厚性瘢痕や痒疹結節を伴うtrigeminal trophic syndrome,ドレナージ部位や手術痕近傍に生じた皮膚転移巣,腹腔鏡後のデスモイド腫瘍,手術瘢痕や植皮部・採皮部に悪性腫瘍が生じた症例,刺青部位の肉芽腫,熱傷後の類天疱瘡などが並んでいる.
びらんや潰瘍が上皮化して治るのは皮膚に限らず粘膜も同じである.実際,潰瘍性大腸炎患者に悪性腫瘍の発生率が高い報告はある.
消化器病変でも同じように,瘢痕治癒した部位にほかの粘膜病変(良性・悪性問わず)が生じるのか,興味が膨らむところである.