特集 小児の感染症
(馬場 直子 編集委員)
今回は「小児の感染症」をテーマに広く症例を集め,疫学,診断,治療について知見のアップデートを試みた.
小児の感染症として学会での報告が多かったのは真菌症であり,これらは小児によくみられる湿疹・皮膚炎と誤診されることも多く,少しでも疑われたら直接鏡検や真菌培養を怠らないことが大切である.真菌症に関しては総説を竹田公信先生に,格闘技をしている学童間で蔓延しているTrichophyton tonsuransによる白癬の統計を猿田隆夫先生に,Microsporum canis感染症の動向と,小児の頭部白癬の治療における問題点について早稲田朋香先生に解説していただいた.また,乳幼児の疥癬も見逃せない疾患であり,しばしば誤診されて診断が遅れがちであるが,治療法が限られている点も問題である.木村真衣先生には乳幼児の疥癬治療についての症例報告を年齢別にまとめていただき,まだガイドラインがない小児疥癬の治療で苦慮する場面においてたいへん参考になると思う.
「臨床例」では,まず先天性皮膚カンジダ症を取り上げた.新生児で多発する小膿疱をみた場合には,一過性に生じる非感染性の疾患や,他の細菌性皮膚疾患の鑑別と,感染経路の特定および予後不良な全身型ではないか等の迅速な診断が重要となる.
頭部白癬の症例では,トリコスコピー所見が診断と治療効果判定に有効であることが写真とともにわかりやすく解説されている.当初脂漏性皮膚炎と診断され,ステロイド外用による治療をされ悪化した後,Microsporum canisによるケルスス禿瘡と診断された症例もあり興味深い.新生児の原発性皮膚アスペルギルス症というのは初めてみるが,早産児や低出生体重児において,出生後急速に拡大するびらんや潰瘍では,本症を念頭に置く必要があるというのは肝に命じておきたい.小児の下眼瞼に生じるスポロトリコーシスは,外来でしばしばみる疾患であり,痂皮の培養検査により診断確定されヨードカリ内服が有効であった典型的な症例報告である.
細菌感染では,PVL陽性MRSA感染症の2例をあげたが,近年,家族間のピンポン感染を長期間繰り返す例も増えてきているので注意したい.また乳児の溶連菌性間擦疹や,舌に付着した異物に伴って生じた黒毛舌の症例も,参考にしていただきたい.
ウイルス感染症としては,喉頭病変を伴った耳帯状疱疹とJAK阻害薬治療中に生じたKaposi水痘様発疹症を掲載した.どれも診療上常に意識しておくべき重要疾患である.
早期診断・治療が要求されるマムシ咬症の症例もあるので,一度みておくと今後役立つと思われる.
小児の感染症は診断,治療が成人と異なることもあり,苦手意識をおもちの方もいらっしゃるかもしれないが,本特集が今後の診療の一助になれば幸いである.