特集 バイオ治療~新しい展開
(向井 秀樹 編集委員)
最近の皮膚科治療薬の進歩は目覚しく,アトピー性皮膚炎,尋常性乾癬,蕁麻疹,結節性痒疹,円形脱毛症,全身性エリテマトーデスなどの重症かつ難治性の患者において,極めて有用性の高いバイオ治療が日常診療で使える画期的な時代が到来している.これらを上手に使うことで,長年苦しめられてきた患者の人生を変えるブレイクスルー治療薬となっている.
巻頭では,激しい痒みのためQOLが大幅に低下する結節性痒疹を取り上げた.『痒疹診療ガイドライン2020』をみても,もっとも推奨度の高い治療がステロイド外用でBであった.2023年にデュピルマブ,そして2024年にネモリズマブが使えるようになり,2剤ともに極めて高い有効性を有している.中嶋千紗先生は「研究 1」で前者の有用性を病態生理の面から,筆者は「治療 1」で28例の使用成績から検証している.全身性強皮症は従来,真皮線維芽細胞に注目した研究が行われていた.松下貴史先生には,「治療 2」で近年のB細胞ターゲット療法について解説いただいた.著明な臨床効果を示す一方で,サイトカイン放出症候群などの副作用の対応,高額,複雑な施行体制が課題という.掌蹠膿疱症は現在3つのバイオ治療薬が使われているが,山本俊幸先生は抗IL-17製剤による壊疽性膿皮症に似た病変に注目している.この逆説的反応は,IL-17の阻害でIL-23/IL-17軸の経路に変調をきたしIL-23上昇に起因すると「総説」でまとめている.膿疱性乾癬は全身症状を伴う難治性炎症性疾患である.最近,抗IL-36製剤が発売されたが,小川陽一先生には「研究 2」で,膿疱内に浸潤する好中球に対する本剤の作用について詳細に解説いただいた.
「臨床例」では,バイオスイッチが奏効した結節性痒疹,難治性水疱性類天疱瘡への新規のバイオ著効例やステロイド減量の有効例,治療に難渋する化膿性汗腺炎がレーザー治療の併用や透析中患者にも有効だった例,乾癬バイオ不応だったが頭部と体部白癬,また皮膚硬化をはじめとする全身性強皮症の症状が早期改善した例,従来の治療に不応の小児の難治性毛孔性紅色粃糠疹への有効例,バイオ治療した膿疱性乾癬の遷延する紅斑へのTYK2阻害薬の有効例,栄養障害性表皮水疱症に伴う有棘細胞癌と多発転移への有効例,難治性の頭部血管肉腫や菌状息肉症への有効例を紹介した.
今回の特集号では従来難治性で治療法の少ない疾患を取り上げており,バイオ治療の新しい展開を目にすることができる.ぜひともご一読いただきたい.