皮膚病診療 (2025年12月号) [雑誌]

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商品説明
特集 色素異常の多種多様
(久保 亮治 編集委員)

赤毛にそばかす,灰色から光の具合によっては緑色の瞳,というのが『赤毛のアン』の主人公アン・シャーリーの特徴である.その舞台がアイルランドであれば,人口の10%程度が赤毛ということなので特徴にはならなかったと思われるが,『赤毛のアン』の舞台はカナダのプリンス・エドワード島である.アンは孤児であるが,おそらくはMC1Rの有名なバリアント,p.R151C,p.R160W,またはp.D294Hのいずれかをヘテロ接合性にもつ両親からそれぞれバリアントを受け継いで,MC1Rバリアントを両アレルにもつことで,赤毛とそばかすの表現型になったものと思われる.とすると,彼女はリドカインの局所麻酔が効きにくい,痛みに敏感な肌をもっていたのではないかと思われる(Liem EB, et al:Anesthesiology 102:509,2005).そのような特徴を示唆する内容は,続編も含めて本作品に登場するのだろうか? 私は未読なので,どなたか教えていただければ幸甚である.
一方,彼女の瞳の色がMC1Rのバリアントだけで説明できるのか,瞳が茶色くならないOCA2のバリアントや,緑色の瞳に関わるTYRやSLC24A4のバリアントとの組み合わせなのか(Caucasianの子なので,これらのバリアントのいずれかをもっている可能性は高そうである)については判断がなかなかむずかしいところである.でも実は,彼女はそんなに孤独でもないのだ.ゴールデンレトリバーや赤毛のホルスタインなど,MC1Rのバリアントによる赤毛はさまざまな動物種でもみられるものだから.

さて,前置きが少々長くなってしまったが,本号ではさまざまな色素異常,色素沈着,色素脱失を取り上げていただいた.色素に関わる遺伝子は河野通浩先生の「総説 2」でも触れられているように総計500以上あり,さらに炎症などによって色素の濃さが変化することを考えると,色素異常の要因は無限にありそうである.「この遺伝子のバリアントによってこんな色素異常になりますよ」といわれても,そう簡単には納得いかないことも多くある.たとえばnevus spilusはHRASの体細胞バリアントによるものが多いが,ではなぜ茶色い斑の中に点々と黒色斑が存在するのか,茶色いところと黒いところは何が違うのか?と聞かれるとよくわからない.神経線維腫症に多発する雀卵斑様色素斑も,色素性痒疹にみられる網目状の色素沈着も,その形成メカニズムや模様を生み出すメカニズムはよくわかっていないのである.何か解き明かせそうな謎はないかいな?と思いながら,外来で患者さんの肌を眺める日々である.あなた,色を極めてみませんか?
目次
【Editor's eye】久保 亮治
【総説1】先天性および後天性の色素低下型色素異常症/岡村 賢
【総説2】先天性および遺伝性色素異常症―色素沈着症を中心に―/河野 通浩
【治療1】尋常性白斑/大磯 直毅
【治療2】皮膚の色素異常に対するレーザー治療―基礎と臨床―/河野 太郎
【臨床例】
・著明な色素沈着を呈した小児皮膚筋炎/草野美沙希,石崎 莉子,山本 俊幸
・肥満細胞の関与が疑われたashy dermatosis/原 侑可,宮本 沙織,野老 翔雲,林 周次郎,井川 健
・成人期まで持続した色素性蕁麻疹/竹山 重彦,久保田典子,乃村 俊史
・頭部脱毛と爪甲萎縮を呈したクロンカイト・カナダ症候群/菅原依理子,増澤真実子,安藝 良一,天羽 康之
・不整形黒色斑を呈し悪性黒色腫と鑑別を要した鼻背部の色素性日光角化症/梶間 諒,大政 遥香,澤田 楓,今井 秀美,稲積 豊子
・色素性梅毒と梅毒性乾癬を生じた2期梅毒/寺田 七子,横内 幸,松岡 芳隆,福田 英嗣
・甲状腺機能低下症に伴った柑皮症/齊藤悠里子,松本香奈枝,小池 貴之,野津 雅和,佐野 千晶,山﨑 修
・広範囲型後天性真皮メラノサイトーシス/奥田 莉奈,横田 真樹,森須 祥子,種瀬 啓士,竹内 常道,石河 晃
・ヒドロキシクロロキンによる色素沈着/岡嵜 桃子,新井 達,中井 健宏
・セファゾリンナトリウムによる多発固定薬疹/長島 優,金岡 美和
・カルボキシマルトース第二鉄注射液の血管外漏出による色素沈着/金子 明,大竹美乃里,佐藤 勘治
【Editorial】変動する医療情勢と皮膚科の課題/浅井 俊弥
【日常診療に役立つ豆知識】すべての植皮に“タイオーバー”は必要?/伏間江貴之
【案件から学ぶ医療事故の対策と問題点】CASE 20 ステロイド点眼液による緑内障を生じた例/向井 秀樹
【リレーエッセイ 私のワークライフバランス】「何もしない時間」のススメ/布袋 祐子
【皮心伝心】常に患者の立場で考える/藤田 靖幸
【皮膚科のトリビア】第246回/浅井 俊弥
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