通巻526号(第45巻3号)2026年秋号 電子版2026年9月1日公開
【特集】「日本語教育における学習者研究-認知的側面に注目して-」
日本語学習者はどういった過程を経て言葉を習得していくのか。そして、どのような活動が習得に効果を発揮するのだろうか。これらの問いに答えるべく、第二言語習得の研究者たちはこれまでにさまざまな実験的あるいは実践的な研究に基づいた知見を教育現場に提供してきた。中には、以前は当たり前のように行っていた方法が、実はほとんど意味のないものであったという発見もあり、この二~三〇年の間に教室活動はもとより、教科書の構成も少しずつ変化してきたと言えるだろう。とはいえ、どのようにすれば学習者が言葉の意味を理解し覚えるのか、言葉の法則に気づくようになるのか、文章理解が促されるのか、逆に学習・習得が妨げられるのか等、まだまだ解明の途上にある。
本特集では、学習者の認知的側面に焦点を当て、認知心理学という分野における研究が、これまでに明らかにしてきたことの一端を紹介しつつ、これからの日本語教育・学習に対してどう貢献するかを展望する。認知過程を明らかにするための研究手法についても紹介し、今後のさらなる研究を推し進める上で役立つ情報も提供する。
【特集】漢字の常識を疑う
漢字についての話題は、一般に関心が抱かれがちである。その真実を実証と論証によって追究する漢字学に関しては、中国の学界においてかなりその内容が変わりつつあり、日本の学界においても数多くの進展が見られる。 例えば、国語の教科書で教わる「六書」という概念に関しては、従来の多くの会意文字説を否定する論説が勢いを増しており、合体字のほとんどが形声文字として見なされるようにまでなってきた。
個々の字源に対する見解も、研究者たちによってかなりの変更がなされている。始皇帝の文字統一についての功績などについても、出土物から新たな検証がなされている。楷書の字体の変遷の探究も、石碑や法帖だけでなく通俗的な文書やノートの類に記された肉筆までが対象に据えられるようになり、民間の俗字の掘り起こしによる
字体の歴史の書き換えが進んでいる。
漢字音の研究も展開を呈しており、例えば漢代頃まではまだ声調がなかったことがほぼ定説となり、個々の語が二重子音など複雑な構造を有する音節をなしていたことが推定されている。また明清の各地での漢字音の実態も解明されてきた。
日本における漢字に対する一般の認識も、旧来の「常識」から少しでも正確なものへと更新していかなければならない。ここに漢字研究の最新の状況を紹介したい。