通巻526号(第45巻3号)
【特集】「日本語教育における学習者研究-認知的側面に注目して-」
日本語学習者はどういった過程を経てことばを習得していくのか、そして、どのような教室活動が習得に効果を発揮するのかという問いに関し、第二言語習得の研究者たちはこれまでに様々な仮説を立て、教育現場等で検証を行ってきた。以前は当たり前のように行っていた指導方法が、実はほとんど意味のないものであった、というような発見もある。しかしながら、日本語学習者が実際にどのように日本語の音や単語を捉え、文をどう理解するのか、何によって習得が促されるのか、逆に妨げられるのか、ということについてはまだまだ解明の過程にある。新たな言葉に触れる時、また、意味を伝えるべく、新たに学んだことばを用いて産出しようとする時、学習者の頭の中では何が起こっているのだろうか。
本特集では、学習者の認知的側面に焦点を当て、これまでの研究で明らかになっていること、そして、認知過程を明らかにするための研究手法について紹介し、これからの日本語学習、外国語学習の在り方を探究し、実際の教育に生かす上でヒントとなる情報、今後のさらなる研究を推し進める上で有用な情報を提供する。
【特集】漢字の常識を疑う
漢字についての話題は、一般に関心を抱かれがちであるが、その真実を追究する漢字学に関しては中国の学界においてかなり内容が変わりつつあり、日本でも学界においても多くの進展が見られる。
例えば六書という概念に関しては、多くの会意文字説を否定する論が勢いを増しており、合体字のほとんどが形声文字として見なされるようになってきた。また始皇帝の文字改革については内実がかなり具体的に判明してきた。
楷書の字体の変遷の探究も、石碑や法帖だけでなく通俗的な文書の類の肉筆までが対象とされ、民間の俗字の掘り起こしによる字体の歴史の書き換えが進んでいる。
漢字音の研究も展開を呈しており、例えば漢代頃まではまだ声調がなかったことがほぼ定説となり、個々の語が二重子音など複雑な構造を有する音節をなしていたことが推定されている。
一方で、日本における漢字に対する一般の認識は旧来のままであることが多いため、ここに漢字研究の現状を紹介したい。