特集 脱毛症治療
(馬場 直子 編集委員)
近年,円形脱毛症の病態解明が大きく進展し,それとともに病態に基づいた新規治療薬であるバリシチニブとリトレシチニブが登場したことが,患者ばかりでなく皮膚科医にとっても大きな福音となった.本特集号では,改めて大きく変わった脱毛症の病態理解,鑑別を含めた診断,治療法と適応の選び方,実際の治療例,副反応,ピットフォールなどをアップデートしたいと思い企画した.
まず巻頭の遺伝性毛髪疾患updateでは,近年解明された事象を解説するとともに,診察の流れ,患者への説明など臨床につながる情報を提供していただいた.治療については,実用化に至ったS-DSC毛髪再生医療の実際や将来への展望と,バリシチニブ内服治療を行った重症円形脱毛症15例の治療成績の提示,さらに病態を踏まえた円形脱毛症の治療選択の考え方,患者への説明のポイント,無効例の対処法,出口戦略など知りたい情報を余すところなく述べていただいた.JAK阻害薬は重症度と病期によって反応性が異なるため,年齢,病期,重症度によって治療の選択肢を検討すること,改善したのちも1年ほど同じ治療を継続し,再発,悪化を最小限にするという実臨床上の重要ポイントがまとめられているので診療に役立てていただきたい.
「臨床例」では,バリシチニブの使用経験を3報告載せているが,それぞれ年齢,罹患期間や投与開始時の重症度,基礎疾患などが異なり,それによって治療経過も大きく異なり,部位による反応性の違いがみられた例もある.ほかには,リトレシチニブが奏効した小児難治性汎発型円形脱毛症,合併したアトピー性皮膚炎に対して投与したウパダシチニブが円形脱毛症に著効した例などもあり興味深い.薬剤以外の治療法として,瘢痕性脱毛に対する単一植毛法と,難治性円形脱毛症に対するエキシマレーザーとUVA1の比較照射なども取り上げた.円形脱毛症の精査中に判明した梅毒性脱毛では,鑑別診断に注目してほしい.最後に治療薬による副作用として,デュタステリドによる急性汎発性発疹性膿疱という本邦初の報告もある.
今後の課題として,現在12歳未満の小児に対する脱毛症治療選択肢は限られており,ステロイド外用薬,局所免疫療法の2つだけである.12歳未満の患者を対象にしたJAK阻害薬の臨床試験が始まっており,今後,小児における治療選択肢の拡大に期待している.