特集 有棘細胞癌~前がん状態を含めて
(向井 秀樹 編集委員)
本邦では有棘細胞癌(squamous cell carcinoma : SCC)は基底細胞癌に次いで2番目に多い皮膚悪性腫瘍である.前がん病変や早期病変患者が多く,早期診断と外科的治療が重要である.一方,10%未満の根治切除不能な進行・再発や転移例もあり,放射線療法や薬物療法が必要になってくる.最近では2018年にSCCの診断法にセンチネルリンパ節生検が保険収載されたり,治療にも新規薬剤が参入している.
そこで,高井利浩先生には『有棘細胞癌診療ガイドライン2025(第4版)』の中から臨床・病理組織学的分類,リスク分類の改変や6つのクリニカルクエスチョンと推奨文,さらにその要点を詳細に解説いただいた.2018年に本邦でも保険収載されたセンチネルリンパ節生検の有用性に関して,松本薫郎先生は現時点では明確な推奨はできないが,少なくとも病理組織学的病期診断のツールとしては有用であり,今後は高リスク症例に絞った検索が必要と述べている.また,爪周囲のSCCやBowen病は頻度が高く,腫瘍を完全切除すれば予後は良好である.成瀬早紀先生らは,末節骨骨膜下レベルを深部マージンとして腫瘍を全摘する指趾骨温存手術を20症例に実施し,全例再発を認めず根治的な手術法であるとしている.進行期SCCへの免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体の有用性については中野英司先生に解説いただき,今後の術前・術後補助療法としての可能性に言及されている.角度を変えた話題として,医療従事者の手指の長期間被爆は放射線角化症やSCC発生につながる.六戸大樹先生らは,放射線防護教育と継続的なモニタリングの必要性,そして皮膚科医によるスクリーニングの重要性を述べている.
SCC発症に関しては,さまざまな発がんリスク因子,前がん病変や前駆症が知られている.臨床例では,光毒性を背景に発がんリスク因子を有するボリコナゾールを長期内服し発がんした例,アトピー性皮膚炎の紅皮症患者の多発性SCCに高発癌型HPV-31を有した例,前がん病変としては多発性Bowen病やBowen様丘疹症例,発癌する可能性がある前駆症としては巨大尖圭コンジローマ,瘢痕,化膿性汗腺炎,汗孔角化症などがあげられており,読み応えがある.
日ごろそれほど診療現場でみる機会は多くはないが,慢性に経過する皮膚潰瘍やSCCの前がん病変・前駆症を診察する際には,SCCの可能性を念頭に置くべきと考える.今回の特集号は,いざというときに役立つよう企画している.ぜひともご一読いただきたい.