大学生の時行ったハワイが初めての「海外旅行」だった著者が、バックパック一つで世界に飛び出す「旅人」になるまでの記録。
「我がまま」な旅は、自分勝手なだけでは成り立たない。「自分の決めた旅路を、きちんと成し遂げて帰ってくる」責任が伴う旅だ。
優秀な兄と比べて、「自分には何もできない」と思い込んでいた。体育会系で鍛えられた同級生と「就活」で戦うとなって、「からっぽな自分が選ばれる理由」が一つもなくて打ちのめされた。
修業のつもりでオーストラリアへワーホリに飛び出した。
スイカファームでテント暮らし。日々、荷詰め用の箱を組み立てる厳しい肉体労働は、自信をもたらす「質の良い地獄」。「トップ・メイキング・ボックス」の称号は、ヘンテコだけど間違いなく初めて自分で掴みとった「評価」だった。
過酷な旅は「人生の研修」だ。
モンゴルの熊や狼が棲む森に一人きりで三日間迷い込んだ時、アメリカ自転車横断旅で脚を痛めた時。極限のサバイバルを切り抜けたり、誰かに背中を押してもらった経験が一つ一つ「自分の取扱説明書」に加わっていく。
ただの景色が、歴史を知ると「誰かが生きた場所」になる。
中国残留孤児三世としてのバックグラウンドを起点に家族の記憶を辿ると、「世界史」に繋がった。歴史の勉強は大嫌いだったのに、その瞬間から旅先の歴史にのめり込んだ。「この場所に、あの日、彼らがいた」100年前の弾痕を辿って、兵隊たちが駆け抜けた通りに坂を登った時、得も言われぬ感慨を味わった。一面しか見えていなかったことに、「背景」があると知った時、物事がグッと鮮やかに見えてくる瞬間がある。
著者が旅した道のりを追いかけ、体得した全てを書き留めた、我がままな旅の知見。