臨床の最前線で対話に注力する戸谷修二医師と、日本の認知症ケアの軸をぶらさずに牽引してきたパイオニアである和田行男氏による、これからの「新しい認知症観」を共に考えるための必読書。
著者らの視点は、「何でもかんでも病気のせい」にして思考を止めてしまう世間の眼差しやケアのあり方を、根底から揺さぶる。
介護現場で「徘徊」や「拒否」という症状として扱われてきた行動の裏には、本人なりの「意味や目的」があり、それは状況に対する「人として自然で当たり前の心の反応」であるとし、混同されがちな「周辺症状」と「BPSD」の違いを歴史的背景から解きほぐしながら、本書はそのことを丁寧に解説している。
そして記憶や判断など認知機能の低下を「あるかないか」の二分法ではなく、強弱のグラデーションである「スペクトラム」として捉える視点を提示し、医療がかかわるフェーズに入ったことを示す印に過ぎないと説いている。
巻末には、お笑い芸人の安藤なつ氏や医療・介護の識者、認知症本人である丹野智文氏らによる貴重な読後感想も多数収録されており、著者らへのメッセージとともに本書の読みどころを知ることができる。
言葉遣い一つで世界の見え方が変わり、かかわり方の結果が変わるという事実は、認知症にかかわる専門職だけでなく家族やこれからを生きる私たち全員に深い気づきを与える。