第5巻では生態学の概要を学ぶことができる。第23章では生物とその外部環境から構成される生態系、それを研究する学問である生態学とは何かが記載され、生態学の重要概念である個体群、群落、景観、生物圏、エコシステム、バイオームなどが紹介されている。第24章では個体群の動態とその制御について、第25章では生物種間相互作用について、第26章では群落及び群落における生物種多様性の重要さについて、第27章では地球のエコシステムについて、興味深い実験を交えて紹介されている。地球のエコシステムは人類の活動によって大きく影響を受け、気候は大きく変化し、生物種多様性は急速に失われつつある。このエコシステムを回復するためには、科学的知識が必要であることはもちろんであるが、国際的な強調が不可欠である。本書227ページの「最先端」に記載されているように「人類は協調性を持つように特異に進化した」とすれば、我々人類はその特質を生かしてエコシステムの回復を目指さなければならない。本書230ページに「我々は科学技術にもとづく文明を持っている。そして我々は賢明にも、ほとんど誰も科学技術を知らなくてもすむように文明を発展させた。これが場合によっては大惨事につながることは容易に想像できるだろう。つかの間、この無知とパワーの危険な混沌状態から目をそらすことはできるだろうが、早晩大惨事がやってくることになる。(中略)科学技術のパワーが適切かつ慎重に利用されるためには、我々自身が科学技術を理解しなければならない」というカール・セーガンの言葉が紹介されているが、第5巻を読了すればこの言葉の重みが実感されるであろう。