時は平安。京の都から遠く北の陸奥の地にある、真吹郷(まふきごう)。
村人に慕われる柏屋敷のひとり娘ゆりと、たたら場で働く少年タケル。
海におちた大きな星が引き起こした津波が、二人の運命を大きく動かすーー!
海を見たことすらないゆりは、ときどき、だれかの背中にしがみつきながら、大きなカメの背中に乗って海の中にいる、不思議な夢を見ます。深くもぐった海の底には豪華な館があり、美しい姫君がいます。
そして、うっとりするような夢の終わりは、いつも柏屋敷の門の前。
ゆりがだれかを見上げると、おさない男の子が目に涙を浮かべ、
ーーあれがおまえの家だよ。おまえはあの家の子なんだよ。
と、言うのです。
お父さんは、ゆりが小さいころ迷子になり、知らない男の子が連れ帰ってきてくれたことがあるのだと言います。
けれども、ゆりは、不思議に思うのでした。
(迷子になった自分は泣いていないのに、どうしてあの子が泣いていたのだろう。あの子は今、どこにいるんだろう? 今も一人で泣いているのかな……)
『天山の巫女ソニン』『チポロ』のファンタジー作家・菅野雪虫が書きたかった「うらしまたろう」もうひとつのお話。
*この作品は、 2024 年9月~2025 年6月に福島民報、紀南新聞、上越タイムスに順次掲載したものに加筆・修正したものです。
*小学4年生以上の漢字にふりがなつき
装画:しまざきジョゼ
装丁:大岡喜直(Next Door Design)