中世のヨーロッパに、隠れ住むことに熱狂した人々の群れがあった。人里離れた荒野や山麓で、祈りと労働に生きた修道士たちである。古代末期のエジプトやカッパドキアに現れ、その後、中世を通じてキリスト教世界の精神文化と経済や社会に大きな影響を与え続けた修道士と修道院の歴史を概観する。
徹底した禁欲と、ひたすら内面世界に神を探し求める観想を実践する「隠修士」が登場したのは、3世紀末のことだった。当初は隠遁者や「世捨て人」として独りで隠れ住んだ彼らは、その極端な個人主義から反文化的な存在とみなされていたが、やがて共同生活による修道制を整え、世俗社会との関係も密接になっていく。
6世紀にモンテ・カッシノ修道院を創設した聖ベネディクトゥスの『戒律』は、その後の修道院生活の根本原則となり、10世紀に設立されたクリュニー修道院は、1500におよぶ従属修道院からなる大修道院連合を組織した。また、シトー会は、12世紀の聖ベルナルドゥスの時代に大発展してヨーロッパ全域に勢力を広げる。
その一方で、私有財産を否定し清貧に生きたドミニコ会やフランシスコ会などの托鉢修道会も、人々の信仰を集めていた。
巻末解説を杉崎泰一郎氏(中央大学教授)が執筆。
〔原本:『修道院:禁欲と観想の中世』講談社現代新書、1995年〕
目次
プロローグ
第一章 禁欲の起源
第二章 殉教から修道制へ
第三章 東方修道制の夜明け
第四章 西方修道制の始まり
第五章 『聖ベネディクトゥス戒律』の普及
第六章 改革修道院クリュニー
第七章 修道士の日常生活
第八章 源泉への回帰 十一世紀の修道院改革と聖堂参事会
第九章 シトー会の誕生
第十章 托鉢修道会の出現
第十一章 中世末期の修道制
エピローグ――日本人と修道院
主な参考文献
解説 修道院――魂のアスリートたちの集い(杉崎泰一郎)