ものすごいものができちゃったんじゃないかな…食材探しの旅、古い坑道、踊り子たちの夜。おいしいものが人と土地の記憶を繋ぐ。
オルエドールで店の仕事や相次ぐ騒動に追われ、すっかり疲れ切った康太。
榛美に促されて長めの休暇を取ることにした彼が思い出したのは、
踏鞴家給地で毎日のように食べていた“ごった煮”だった。
ならば大豆を煮よう――そう決めたものの、
西方世界では肝心の大豆がなかなか手に入らない。
ようやく定期市で手がかりを得た康太と榛美は、海路と馬車を乗り継ぎ、
北方のミリヤツフ村へ。
道中で出会った狐人の商人アリーと行動をともにしながら、
彼女の故郷に残る内戦の記憶や、忘れられかけた豆料理、
土地に根づいた食文化に触れていく。
旅を終えてオルエドールへ戻ると、街では別の不穏な気配が強まりつつあった。
領主ラザロを悩ませているのは、大オル主義を掲げる民族主義の再燃と、
トリカニャフ回廊で進む軍備拡張。
軍令官ガリルとの駆け引きの裏では、狩狼官ヨヴァンや、
狙撃の才を持つブラニル、ハーフエルフの少女エレオネたちの過去も重なり、
二十年前の内戦が残した傷が現在へと影を落としていく。
料理と酒、人々の記憶、土地に刻まれた歴史――。
康太たちの暮らすオルエドールで、それぞれの物語が静かに交わり始める。