定年退職から3年。68歳の憲司は郊外で一人暮らしをしていた。やりたいこともなく暇を持て余していたある日、ふと、家を捨てて車中泊の旅に出ようと思いつく。
中古の軽自動車を購入、荷造りも終わり、いざ出発という瞬間、7年前にがんで亡くなった妻・絢子が助手席に乗り込んでくる。しかも、元気だった頃の姿で。
憲司は自らの認知症を疑いながらも、想定外の二人旅が始まる。富士の樹海、伊勢志摩、大阪、宍道湖、出雲大社、五島列島……。日ごとに若返っていく絢子の姿に動揺しながらも、二人で過ごす奇跡のような時間が続くことを願う憲司だったが――。
『海の見える理髪店』『笑う森』の著者が贈る、感涙のロード・ノベル。
■プロフィール
1956年埼玉県生まれ。コピーライターを経て、1997年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞、2014年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞、2016年『海の見える理髪店』で直木三十五賞、2024年『笑う森』で中央公論文芸賞を受賞。『我らが緑の大地』『陰謀論百物語』など著書多数。