合理化社会への疑問を見事に描出したSF
[未来――その言葉に対して、彼はほとんどアレルギーに近い不信感を持っていた。彼の小さい頃から叫ばれつづけた未来(中略)その結果が、今の世の中なのではなかったか? 彼自身の、こんな生活なのではなかったか?(中略)
彼は、ほとんど叫ぶようにいった。「それは……いったい誰のための未来ですか?」]
時代に即応してうまく立ち回るということのできない浅野年夫は、潜在能力が高いにもかかわらず、うだつの上がらない下級技師に甘んじていた。あるとき、学生時代の同級生に誘われて、高級なセックスロボットの店を訪れると、そこには年夫の不平不満をすべて受け止め、言葉や振る舞いで癒してくれる〈セクソロイド〉ユカリがいた。“彼女”の魅力にすっかりはまり、足しげく通うようになった年夫だが、やがてユカリは初期化され、年夫と過ごした記憶がすべてなくなってしまう運命にあることを知る。
かつて、つねに権威に抵抗する姿勢を貫き、仲間内から“攻撃的文化人”と評価されていた年夫は、ついに卑屈な会社員の殻を脱ぎ捨てて大胆な行動に出る――。
心の通わない合理化社会への強い憤懣を、近未来SFのかたちを借りて見事に描き出した秀作。