生と死のあわいに食がある
植野さんの美味しい家族のはなし
涙ひとさじで塩味増し
賞味期限は永遠
――春風亭一之輔氏
食の雑誌「dancyu」の名物編集長として、筆者は全国津々浦々の「旨い」を追いかけてきた。
しかし、その味を、父と母には土産話としてしか届けられず。編集長を退き、いよいよ親孝行を……
そう思った矢先、父の胃癌が判明し、急逝。リウマチを患う母も施設に入所した。
「おかめや」の焼きそばに平目のエンガワ、そしてたらちり。
急に遠くなってしまったふたりを思うなかで、筆者がよすがとしたのは、食の記憶だった。
【編集担当からのおすすめ情報】
食の雑誌「dancyu」の編集長として、「ふつうの料理」「日常の味」を追い求めてきた植野広生さん。そんな著者が綴るのは、還暦を迎えた人間なら誰もが出会うかもしれない試練と出来事です。それでも日々は巡ります。食べて、呑んで、ときどき介護! 人生のほろ苦さも滋味も詰まった、筆者初のエッセイ。どうぞご賞味ください。