雪おんな、耳なし芳一など、小泉八雲が生き返らせた民間伝承十五編を収録。恐怖漫画家つのだじろうの筆で贈る戦慄の怪異短篇集。
『怪談』(Kwaidan)は小泉八雲(ラフカディオ・ハーン、西暦一八五〇一九〇四年)の手になる短篇小説集である。明治三七(一九〇四)年、アメリカとイギリスで出版され、大正一五(一九二六)年『小泉八雲全集』第七巻(第一書房)に翻訳が収録された。『古今著聞集』などの古典や民間説話に取材した怪談奇話一七篇と昆虫研究三篇を収める。
ラフカディオ・ハーンはギリシアに生れ、イギリス、フランスで教育を受けたのち、アメリカに渡り新聞記者になった。かねてから東洋に興味を抱いていたハーンは、明治二三(一八九〇)年に来日、松江中学などで英語教師を勤めながら日本研究を深め、日本のありのままの姿を欧米に伝えた。来日した年、小泉セツと結婚。のち日本に帰化して小泉八雲を名乗る。『怪談』では東洋的な趣きを豊かに盛りこみ、単なる日本紹介の域を超えた文学的芳香の高い作品に仕上げることに成功している。
本全集への収録にあたっては、八雲のほかの著作集『骨董』『天の川綺譚』『明暗』『霊の日本』からも適宜作品を採り入れ、再編集を施した。