茨木のり子、田辺聖子、石牟礼道子、石垣りん……不朽の名作を生んだ女性作家たち。
彼女たちはどうして物書きになったのか。
茨木のり子は、〈詩を書くための索(もと)というのは、どうも家庭ですね。みんな何かしら傷を負っているというか、そういう感じが非常に強くするんです〉と語る。
〈父には今で言う「女の自立」という考えがはっきりと在ったのである〉。
男性に依存せず、女性は一人でも生き抜ける力を持たねばならないと娘に諭した。
茨木はその考えを生涯貫く。
彼女が父に捧げた言葉は、「いい男だったわ お父さん」。
石垣りんは、何度も再婚した父、その若い妻である義母、弟らの生活をひとり養い続けた。
〈ああ疲れた/ほんとうに疲れた〉と吐露しながら。
〈父と義母があんまり仲が良いので 鼻をつまみたくなるのだ〉と嫌悪しながら。
萩原葉子は〈私は父・朔太郎の犠牲者〉と綴り、
石牟礼道子は窮乏の中で決然と生きた父の姿に自らの使命を知った。
ーー彼女たちには、強く、弱く、身勝手で、不甲斐なく、そして憧れの父がいた。
戦争に傷ついた時代、悔やみ、憎み、また愛おしみながら、彼女たちは父を書いた。
「書くことは、この世に自分をつなぎとめておく艫綱(ともづな)のようなものだった」
『狂うひと』『サガレン』『やなせたかしの生涯』など、人物評伝の名手が紡ぐ、九人の女性作家たちの父と娘の物語。
●辻村深月さん推薦!
「美しく、凛として正しく。
彼女たちと、その父の人生に出会えてよかった」
●斎藤真理子さん
「一個の星座のような本だ。父との縁を中心に集まった星々は、光の色もまたたき方もさまざまで、父に深く愛された娘もいれば、とてもそうとはいえない娘もいる。(略)親子とは何て始末の悪い人間関係なのだろうと思う」(本書「解説」)