急性期虚血性脳卒中(AIS)治療は、過去数十年で劇的な進化を遂げてきました。アルテプラーゼ(rt-PA)による静脈内血栓溶解療法(IV-tPA)の登場、機械的血栓回収療法の確立、そして画像診断技術の進歩は、かつて「治療不能」とされた脳卒中患者に新たな希望をもたらしました。一方で、治療適応の拡大や地域医療体制の整備、倫理的・制度的課題への対応など、現場では今なお多くの課題に直面しています。本特集は、AIS治療の過去・現在・未来を多角的に捉え、臨床現場に携わるすべての医療者が治療の本質と進化の軌跡を理解し、今後の展望を共有することを目的としています。第1章では、AIS治療の黎明期から現在に至るまでの歴史を振り返ります。脳神経外科医が果たしてきた役割、rt-PA導入の舞台裏、MELT-Japanの意義、そしてデバイス開発の変遷など、第一線の医師たちによる証言と記録を通じて、治療の礎がどのように築かれてきたかを明らかにします。第2章では、AISの疫学、病態生理、画像診断技術、治療理論といった基礎知識を整理し、読者が現在の標準治療を理解するための土台を提供します。特に、灌流画像やペナンブラ理論など、近年の臨床判断に不可欠な概念を丁寧に解説します。第3章では、現在の標準治療とその課題に焦点を当てます。IV-tPAや機械的血栓回収療法の最新エビデンス、画像評価の実際的活用、地域連携体制、リハビリテーション、慢性期管理、さらには倫理・制度面の課題まで、臨床現場で直面する多様なテーマを網羅的に取り上げます。第4章では、AIや新規薬剤、個別化医療、教育・シミュレーションといった未来志向のトピックを検討します。第5章では、対談を通じて、多職種連携・地域医療・制度などの観点から、次世代のAIS治療体制の構築を展望します。本特集が、AIS治療に携わるすべての医療者にとって、過去を学び、現在を見つめ、未来を構想するための羅針盤となることを願ってやみません。(Editorialより)