利益を生む相互依存は、なぜリスクになり得るのか?
半導体、エネルギー、食糧から金融・決済システムまで、利益を生み出してきた経済のつながりそのものが国家間の競争や対立の手段として利用される時代が到来した。米中対立、トランプ関税、ロシアへの経済制裁と先が見越せない中で、企業にとっても、どこから調達し、どこに投資し、どの市場とつながるかは、もはやコストや効率だけでは判断できなくなっている。
重要物資の供給途絶や経済的威圧への備えが求められる一方で、過度な保護主義は市場の効率性や競争力を損なう。では、平時の豊かさと危機への備えをどう両立すればよいのか。関税、経済制裁、産業政策は何を守り、どのような代償を生むのか。自由貿易の利益を維持しながら、相互依存が生む脆弱性をどのように管理すべきなのか。
本書は、経済安全保障を経済学の視点から体系的に読み解く。自由貿易の利益とその限界を出発点に、関税、中国の産業競争力、輸出管理・金融制裁、産業政策を、共通の分析枠組みで捉える。政策の効果だけでなく、その費用と負担の分配、相手国の反応まで視野に入れ、経済安全保障を考えるための判断軸を示す。
理論・実証研究・政策実務をつなぐ初の体系的解説
• トランプ関税の負担は誰に帰着したのか?
• 中国経済は減速しているのに、なぜ製造業は強いのか?
• 輸出管理や金融制裁は相手国の行動をどこまで変えられるのか?
• 巨額の補助金は産業を強くするのか?
• 日本は何を国内に残し、何を同盟国・友好国と分担すべきか?
経済学研究と、財務省・在米日本国大使館などでの政策実務を踏まえ、効率性、レジリエンス、強制力、執行可能性、政治的持続性という5つの評価軸から、上記のような政策を検討する。
本書が目指すのは、相互依存を一律に断ち切ることではない。その利益を活かしながら、脆弱性や威圧を制度的に管理し、危機時にも選択肢を失わない経済を構想することである。経済が戦場となる時代の意思決定に必要な視座と判断軸を示す一冊。
元アジア開発銀行総裁・元財務官
中尾武彦氏 推薦
「筆者の該博な知識と鋭い分析は、関税の効果、産業政策、輸出管理と金融制裁、中国という脆弱性にまで及ぶ。地政学リスク時代に必読の1冊」