ビジネスの舞台で、国際標準化が大きなテーマとして浮上しています。イノベーションや事業創成、市場創成の推進に当たり、国際的なルール形成の重要度が高まっているためです。 実際、自社が持つ技術などが国際的に認められれば、大きなボリュームの中でビジネスを展開しコスト低減を図るなど企業の国際競争力の向上につながります。しかしこの分野において日本は、欧州をはじめ他の主要国に後れを取ります。結果、様々な分野で「技術で勝ってビジネスで負ける」という苦い経験を積み重ねてきました。その原因の一つとして指摘されるのが、日本の国際標準化の取り組みは一部の研究者など属人的な活動に多くを依存している点です。つまり、日本では経営層の国際標準に対する理解不足もあり、国際標準を推進する人材が圧倒的に不足しているのです。
こうした課題に対し、経済産業省による「多角的なルール形成活動の取組が高く評価された企業」に選定されたIDECで国際標準化活動の陣頭指揮を執った著者が、その経験を伝えるべく本書を書き下ろしました。実は、機械の操作スイッチなどの制御機器を手掛ける同社はかつて、中核事業である押釦(ぼたん)スイッチが規格化されずに市場を喪失しました。この苦い経験から、著者を中心に同社は国際標準化に積極的に取り組むようになり、その後「イネーブルスイッチ」や「非常停止スイッチ」といった製品で世界トップシェアを確保し高い収益を上げるようになったのです。
それだけではありません。著者は、「技術」「知財」「標準」「認証」を組み合わせたオープン&クローズ戦略を駆使し、新しい事業や新しい市場を自ら切り拓いてきました。製造業や建設業をはじめ様々な現場で必要とされる安全人材を育成するための「要員資格認証」、自動運転やフィジカルAIなど最先端技術の安全確保にも有効な新しい安全の概念「協調安全」、そして多くの分野に展開し2032年には1兆円の市場規模が見込まれる「ファインバブル産業」。いずれも、日本発の技術や考え方をベースに、世界中に仲間をつくり、彼らと共に事業創成や市場創成を成し遂げた事例といえます。
著者は、「国際標準化は産業競争力向上において極めて有力なツールとなり得るが、その活動の仕方はほとんど知られていない」と指摘します。そこで本書では、著者が自ら実践してきた上述の5つの成功体験を基に、国際標準化活動の進め方やノウハウを余すことなく開示します。国際標準の「解説本」とは一線を画し、国際標準化活動の「実践本」として、スタートアップをはじめ中小・中堅企業、大企業などの産業界からアカデミアまで、多くのビジネスマンに役立つ1冊です。