形状が道具へ、道具が動作へ、そして動作はそれを使う男へとつながっていった――
技術と材料から読み解く古代ローマの壮大な建設史。
紀元前に端を発する古代ローマの建設物を、「建設技術と材料」の変遷に焦点を当て、遺跡写真と図解イラストを含む770点超の図版を示し読み解く。古代ローマ帝国における建設技術は、測量術や採石、運搬といった道具を携えた技術に始まり、石や木など様々な材料を元にした複雑な工法を獲得し、やがて精緻な壁面装飾や、暖房や浴場などの土木工作物を含む壮大な建設物をつくり上げるに至った。著者は、古代建築研修所パリ事務所元所長、世界遺産・ユネスコ専門委員などを歴任してきたジャン=ピエール・アダム。原書は1984年にフランスで出版されて以降、建築学の世界で広く教科書採用されており、日本では満を持しての邦訳となる。さらに日本語版は、訳者による遺跡場所をプロットした地図・専門用語の解説・解題を収録。古代都市に関する世界各地のフィールド調査を数多く行ってきた訳者の視点が重なり、古代ローマ建築に見られる建設技術と材料についての総合的な理解を深められる一冊である。
「訳者解題」より
本書は古代ローマ建築技術の発達史ととらえてもよいし、広大な古代ローマ帝国における建築技術の総覧として使ってもよい。読者には古代ローマ時代に建設技術を学ぶ若者、つまり「建築家の卵あるいは大工見習い」になりきって本書を読んでもらいたい。まず基礎知識として測量学を学び(第1章)、次に総論としての素材を学び(第2章)、個別の構成法を修得していく(第3、4章)、とくに重要な組積造を詳しく学んでから(第5章)、主構造としてアーチやヴォールトのメカニズムを理解する(第6章)。次に付属的な工作物である床や天井、階段を構成する木工(第7章)、および壁面、床の装飾法あるいは構成法を学ぶ(第8、9章)。想像を豊かにすれば、第7章からは実際の現場で研修を受けることになるだろう。次に周辺の土木工作物と設備関係について学ぶ(第10章)。浴場に関する給湯、排水、暖房設備がここに入るのは、建築技術者として設備を学ぶタイミングがここなのである。最後に個別建築(ビルディング・タイプ別)を建てる上での注意事項が簡単に解説される。あとは現場で学んでくださいと言わんばかりである。