近年,日本は「脳ブーム」の感があり,巷には関係本があふれている。ところが,脳を理解するための基礎となるニューロン(神経細胞)については,大学生でも正しく理解しているものが少ない。それは,ニューロンの理解には電気現象の理解が不可欠であるのだが,それがきちんとできていないからである。これは,わかりやすい解説書がないこと,また大学教員や高校教員の認識不足によるところが大きい。
著者は長年大学で神経生理学を教えており,ニューロンに関して,学生の知識や理解がどのようなものかよくわかっている。また,学生との対話形式ですすめてきた授業経験から,学生が抱く疑問や陥りやすい誤りにもよく通じている。それで,これまでの体験をもとに,自身の授業を再現したのが本書である。内容は,学会誌に4回連載されたもの(2012)で,多くの会員からは高い評価を得ている。
また,本書では「教科書高等学校『生物』へのコメント」という一章をもうけた。そこでは,2013年から大幅に改訂される高校教科書「生物」の内容をチェックし,具体的に問題点を指摘するとともに,改善へのアドバイスを行った。
本書は,オリジナルな比喩やモデルを使って,ニューロンの基礎をわかりやすく解説している。高校生にもわかるはずである。ただし,単なるお話ではなく,専門的な内容をどうすれば理解できるかを示しており,大学教員にとっても授業の参考となるものである。また,大学生にとっては,専門への橋渡しとして役立つと思われる(専門用語と定義を再確認できるように基礎知識,また発展知識を学べるようにコラムを配置してある)。さらに,高校教員や高校教科書の著者をはじめ関係者にとっても,大いに参考になると思われる。