「人はなぜ学ぶのか」「人は学びを人生でどのように活かすのか」というテーマは、時代や国境を超えた普遍的な問いであろう。本書では、学びの本来の意味を、単に知識を蓄えることではなく、人間を内面から高め、善へと導き、社会に貢献する存在へと育むためのものであるとする。またイスラームの教育の特色を、知識と信仰、理性と倫理、個人の成長と社会への責任を切り離すことなく統合し、人間形成の道として捉える点にあると明解に示す。
ドバイ・イスラーム銀行の創設に尽力した実業家で、かつ教育者や慈善家としても名高い著者が、現代アラブ・イスラーム社会の課題と願いを教育論という形でまとめ、教育の普遍的価値を問い直す名著。
❖推薦の言葉=水谷周(イスラーム研究家)
「アラブ・イスラーム諸国は長い混迷のトンネルをくぐってきた。焦りと原因究明の気持ちが常に併存してきた。欧米一辺倒ではなく、イスラームの精神的な諸価値を見直そうというのが主流となった。本書はその主流に沿いつつ、率直な姿勢と共に、様々な具体策を提唱している点が注目される。また日本に学べとし、我が国で言う「和魂洋才」に通じるものがある。特筆すべき具体的主張をいくつか挙げてみよう。
1)イスラーム諸国の現状は後進的であるが、すべては教育に掛かっている。社会に諸問題―薬物、失業、晩婚、女性軽視、アラビア語軽視など―が山積している。
2)知識教育の過剰。対して日本は国家と家族で従順さと尊敬を忘れない教育をして成功した。
3)「非伝統的な」真のイスラーム教育を。それを担うべきは、イスラーム教育学校、科学技術工学院、イスラーム式女子学校の3本建てである。
4)15歳には卒業し、直ちに実社会へ、そして若者活躍と家族形成の活性化を。
以上のように、教育のあり方や国家予算の分配法など具体的な持論を展開している。さすがイスラーム銀行の創始者だが、本書が刊行されて以来、幾つかのアラブ諸国では日本式教育も普及してきた。イスラーム諸国の今後を考える上で、時事とは別に本書のような真摯な取り組みを知る機会は限られている。また改めて、道徳教育など日本自らを振り返る機会ともなろう。貴重な一書として推薦する。」