昆虫工学

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昆虫工学
  • 発売日:2026/06/29
  • 出版社:コロナ社
  • ISBN:9784339067668
通常価格 4,620 円(税込)
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  • 発売日:2026/06/29
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商品説明
【本書の特徴】
本書は,わたしたち人間とは「別の世界の住人」である昆虫の知能をひもとき,人間やAIが前提としてきた枠組みを超え,自然が長い時間をかけて磨き上げてきた知の体系を,新しい価値創造へと結びつける「昆虫工学」という新しい体系を提案・紹介するものです。
昆虫の世界は,私たちが「当たり前」と思っている世界とは大きく異なります。視覚・聴覚・嗅覚といった感覚の仕組み,時間のとらえ方,さらには体の大きさに基づく力学的制約まで,昆虫はまったく異なる条件のもとで環境を認識し,行動しています。
近年,人工知能(AI)は大量のデータから新たな価値を生み出す技術として発展してきました。しかしその多くは,人間や人工センサによって取得された「人為的に設計された観測系」に依存しています。したがって,人間の感覚や発想の枠組みの外側にある昆虫の世界は,依然として十分に扱われているとは言えないのです。
昆虫の知能は,数億年にわたる進化の中で環境と相互作用しながら洗練されてきた,もう一つの知の体系です。それを理解し,工学や農学へ応用することは,人間やAIの枠組みを拡張し,新しい発想や設計原理を生み出す契機となります。
本書では,昆虫の知能を支える感覚・脳・行動のしくみを基礎から解説するとともに,それらを応用した技術や研究の最前線を紹介します。
例えば,匂いのセンシングにおいては,昆虫のたんぱく質を利用した超高感度センサや,触角を用いた匂い源探索ロボットの開発が進められています。また,振動感覚を利用した害虫防除といった農学的応用から,羽ばたきロボットや群知能ロボット,ナビゲーションロボットの開発に至る研究も展開されています。さらに,昆虫を遠隔操作する「昆虫サイボーグ」は,その飛行や歩行機能を直接活用することで,被災地における要救護者探索への応用が期待されています。
こうした流れは,昆虫の脳機能を神経細胞レベルから再構築する全脳シミュレーション研究へとつながり,我が国のスーパーコンピュータ「富岳」を用いた取り組みなど,これまでの生物模倣をはるかに超えた新たな研究領域へと発展しています。
読者は本書「昆虫工学」を通じて,「世界の見え方」そのものが変わる体験とともに,新しい価値創造の可能性と新たな学問的視座に触れることになるでしょう。それは,これまでとは異なる世界を起点とした思考への第一歩となるはずです。

【主要目次】
第1部 基礎編
1.行動/2.中枢処理/3.昆虫のセンサ(感覚器)の構造と機能
第2部 応用編
4.昆虫機能の工学応用/5.昆虫のセンサに関わる工学応用/6.昆虫の中枢処理に関わる工学応用/7.昆虫の行動に関わる工学応用

【本書のキーワード】
昆虫,環(境)世界,生物知能,群知能,進化,感覚,脳,行動,微小脳,センサ,ロボット,ハイブリッド,サイボーグ,ナビゲーション,羽ばたき飛行,歩行,フェロモン,化学感覚,大規模シミュレーション,遺伝子工学,遺伝子改変,ゲノム編集
目次
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

第1部 基礎編

1.行動
1.1 昆虫の多様な行動 
1.2 昆虫の進化的起源の探索 
 1.2.1 外骨格を通して昆虫について考える 
 1.2.2 昆虫の一般的な分類 
 1.2.3 昆虫が独自に獲得した外骨格硬化のしくみ 
 1.2.4 外骨格構造の進化と応用 
 1.2.5 昆虫外骨格の応用に向けて 
1.3 飛翔行動の神経・筋・骨格メカニズム 
 1.3.1 昆虫の飛行に学ぶ 
 1.3.2 飛翔筋の構造と機能 
 1.3.3 羽ばたき運動を生み出す神経メカニズム 
 1.3.4 昆虫飛行の統合的な理解に向けて 
1.4 環境知覚と適応的行動 
 1.4.1 環境の知覚 
 1.4.2 内部状態に応じた行動の発現 
 1.4.3 身体構造と適応行動の発現 
 1.4.4 人工物の設計と制御に向けて 
1.5 昆虫のナビゲーション戦略と指向性逃避行動の状況依存的制御 
 1.5.1 はじめに:昆虫の移動について 
 1.5.2 昆虫の多様なナビゲーション戦略 
 1.5.3 指向性逃避行動の状況依存的制御 
1.6 好蟻性昆虫によるアリ社会への統合戦略 
 1.6.1 アリの社会 
 1.6.2 好蟻性昆虫 
 1.6.3 栄養報酬 
 1.6.4 学習と認知 
 1.6.5 化学擬態 
 1.6.6 行動操作 
 1.6.7 好蟻性昆虫によるアリの認識 
 1.6.8 アリ社会への統合戦略に関する今後の展望 
引用・参考文献

2.中枢処理
2.1 昆虫脳の情報処理機構 
2.2 視覚情報の情報処理機構 
 2.2.1 はじめに 
 2.2.2 視覚信号の流れと視覚神経回路 
 2.2.3 眼の空間分解能と感度 
 2.2.4 色の情報処理 
 2.2.5 動きの情報処理 
 2.2.6 おわりに 
2.3 嗅覚系高次中枢の情報処理 
 2.3.1 末梢:匂い分子の受容 
 2.3.2 一次中枢:応答の調節 
 2.3.3 高次中枢:応答パターンの分離 
 2.3.4 匂いの「価値」に基づく行動選択 
 2.3.5 もう一つの嗅覚系高次中枢 
 2.3.6 昆虫嗅覚研究の今後 
2.4 歩行運動と探索行動を制御する脳機能 
 2.4.1 昆虫を用いた歩行運動制御の理解 
 2.4.2 ショウジョウバエを用いた脳研究の魅力 
 2.4.3 昆虫脳の中心複合体の探索行動における機能 
 2.4.4 昆虫脳の視覚回路による歩行・飛行軌道制御 
 2.4.5 歩行運動制御のさらなる理解と応用 
2.5 神経回路の自発活動パターンとその機能的役割 
 2.5.1 自発活動パターンとは 
 2.5.2 発達段階における自発活動パターンの機能性 
 2.5.3 感覚系の神経回路の自発活動パターン 
 2.5.4 内部状態モニタリングとしての自発活動パターン 
 2.5.5 自発活動パターンの昆虫工学的応用に関する今後の展望 
引用・参考文献

3.昆虫のセンサ(感覚器)の構造と機能
3.1 センサ(感覚器)の多様性と応用 
 3.1.1 センサの多様性 
 3.1.2 感覚器・機能の活用例 
 3.1.3 本章について 
3.2 昆虫の光受容と視覚情報処理(視覚・色覚) 
 3.2.1 複眼の構造と光適応 
 3.2.2 個眼の視細胞構成とその機能 
 3.2.3 色覚の神経機構 
3.3 昆虫の振動・聴覚器の構造と機能 
 3.3.1 振動・聴覚を司る共通のセンサ 
 3.3.2 弦音器官の基本構造 
 3.3.3 振動・聴覚器の進化 
 3.3.4 振動受容器 
 3.3.5 聴覚器 
 3.3.6 弦音器官の周波数フィルタリングと増幅 
 3.3.7 生物工学への応用と今後の展望 
3.4 昆虫の嗅覚・味覚の受容体構造と機能 
 3.4.1 昆虫における環境中の化学物質の役割 
 3.4.2 体外の物質を検知する化学感覚器 
 3.4.3 化学感覚器で機能する受容体ファミリーとその発現 
 3.4.4 化学感覚受容体の機能 
 3.4.5 嗅覚および味覚受容体の立体構造 
 3.4.6 生物機能を工学利用するうえでの,今後の昆虫嗅覚研究の課題 
3.5 昆虫のフェロモン受容機能と情報処理 
 3.5.1 ガとゴキブリの性フェロモン 
 3.5.2 性フェロモンの受容機構 
 3.5.3 一次嗅覚中枢触角葉の性的二型 
 3.5.4 ガとゴキブリの大糸球体における性フェロモン情報処理機構 
 3.5.5 まとめ:飛翔昆虫と歩行昆虫のフェロモン情報処理戦略 
3.6 温度受容や刺激受容を生み出すしくみ 
 3.6.1 昆虫での温度受容研究 
 3.6.2 ハエの温度センサの種類 
 3.6.3 TRPチャネルを介した温度受容 
 3.6.4 GRを介した温度受容(高温センサ) 
 3.6.5 IRを介した温度受容(高温・低温センサ) 
 3.6.6 GPCRを介した温度受容 
 3.6.7 Anoctaminを介した温度応答の増強 
 3.6.8 その他の昆虫がもつ温度センサと温度受容 
 3.6.9 温度センサの温度応答機構 
 3.6.10 環境問題と工学的応用に向けた今後の展望 
引用・参考文献

第2部 応用編

4.昆虫機能の工学応用
引用・参考文献

5.昆虫のセンサに関わる工学応用
5.1 感覚機能の農業応用(感覚応用) 
 5.1.1 害虫防除と感覚機能 
 5.1.2 振動を利用した害虫防除 
 5.1.3 光を利用した害虫防除 
 5.1.4 今後の展望 
5.2 匂いバイオセンシングシステム 
 5.2.1 生物のしくみを利用した匂いセンサ 
 5.2.2 センサのしくみ 
 5.2.3 液相匂いバイオセンサシステム 
 5.2.4 気相匂いバイオセンサシステム 
 5.2.5 昆虫のしくみを利用した匂いセンサのまとめ 
引用・参考文献

6.昆虫の中枢処理に関わる工学応用
6.1 昆虫神経系大規模シミュレーションの基礎とその展望 
 6.1.1 はじめに 
 6.1.2 神経細胞と細胞モデル 
 6.1.3 フィードフォワードネットワークと昆虫脳 
 6.1.4 再帰的なネットワークと昆虫局所回路 
 6.1.5 昆虫のシミュレーションの例 
 6.1.6 展望:並行する高次機能と全脳シミュレーション 
 6.1.7 まとめ 
6.2 昆虫ハイブリッドロボット 
 6.2.1 研究開発動向 
 6.2.2 研究開発例 
 6.2.3 最後に 
引用・参考文献

7.昆虫の行動に関わる工学応用
7.1 羽ばたきロボット 
 7.1.1 飛行ロボットの基礎設計 
 7.1.2 要素設計について 
 7.1.3 羽ばたきロボットの例 
 7.1.4 飛翔生物の行動に関わる羽ばたきロボットの課題と展望 
7.2 群知能アルゴリズム 
 7.2.1 昆虫と群知能 
 7.2.2 間接的相互作用による秩序形成 
 7.2.3 解探索への応用: Ant Colony Optimization 
 7.2.4 活動状態の自己組織的調整 
 7.2.5 生物の実践的行動の応用可能性 
7.3 昆虫の行動戦略を模倣した嗅覚ナビゲーションロボット 
 7.3.1 嗅覚ナビゲーションの背景 
 7.3.2 地上走行型ロボットによる嗅覚ナビゲーション 
 7.3.3 ドローンを用いた3次元的嗅覚ナビゲーション 
 7.3.4 嗅覚ナビゲーションの展望 
引用・参考文献

コラム
コラム1 電気生理学的計測手法
コラム2 昆虫の脳と行動を調べるロボット技術
コラム3 遺伝子組換え技術とゲノム編集
引用・参考文献
あとがき:昆虫工学が拓く新しい価値創造
索引
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