プロローグ
「ミュージカルはなぜいきなり歌うのか。」
「リアリズム」の魔
ミュージカルと観客の「型」
「非日常」という「きらめき」
本書の目的
第1章 ミュージカルの筋とプロット
1 ミュージカルって何?
「ミュージカル・ナンバー」
物語の「筋」
アリストテレスの「ミュトス」と「ロゴス」
ミュージカルの「筋」
2 プロットとナンバー
「大きなプロット」と「小さなプロット」
ブック・ミュージカルの誕生
「プロット」の連鎖
プロットの意図的な放棄――ブックレス・ミュージカルとコンセプト・ミュージカル
3 ナンバーの「時間」
ナンバーのなかの時間
ナンバーのなかのプロット
感情エネルギーとしてのダンスの「時間」
プロットのなかの「ダンス」
まとめ
第2章 キャラクター
1 キャラクターを手に入れる
「役割」と「性格」
2 「古典的」なキャラクター
「シンデレラ・ストーリー」のキャラクター
「役割」と物語
3 「近代的」なキャラクター
異形の悲しみ
《オペラ座の怪人》(1986)
シャッフルされた「役割」と「性格」
「性格」のゆがみ
複数形の視点
正義なき時代の「ヒーロー」
《ミス・サイゴン》(1989)
4 「オズの魔法使い」にみるキャラクターの変化
(1)映画『オズの魔法使』(1939)
(2)ミュージカル《ザ・ウィズ》(1974)と映画『ウィズ』(1978)
(3)《ウィキッド》(2004)
まとめ
第3章 ナンバーの機能
1 ナンバーの機能
登場人物は歌っているのか
4種類の機能
機能の組み合わせ
分類するための手順
機能分類のメリット
2 ナンバーの機能(1)「ショー SHOW」
舞台上のステージ
登場人物の「職業」と「ショー」の機能
ステージの外側で
《シカゴ》と「ショーのショー」
客役をひきうける観客たち
3 ナンバーの機能(2)「ユニティ UNITY」
「ユニティ」という言葉
世界観のあらわれ
「テーマ」の提示
主人公から見た世界像
「共有」と「同意」
4 ナンバーの機能(3)「ダイアローグ DIALOGUE」
「思想の説明・説得」
ヒギンズ教授の孤独
説得が「ショー」になる
「ダイアローグ→ユニティ」(愛の告白)
「ダイアローグ→ユニティ」(説得→共有)
《ウェスト・サイド物語》の「説得・同意」
《ジーザス・クライスト・スーパースター》の「ダイアローグ」
同意にいたらないダイアローグ
《レント》の場合――〈ライト・マイ・キャンドル〉
「ナレーション」――わたしたちに向けた「ダイアローグ」
5 ナンバーの機能(4)「モノローグ MONOLOGUE」
「思想」・「願望」の提示
「感情」の表現
プロットの結果によらない「モノローグ」
自問自答の「モノローグ」
「ダイアローグ」なのに「モノローグ」
みえないふり、きこえないふり
物言わぬ者への「ダイアローグ〔モノローグ〕」
モノローグの「ユニティ」
まとめ
第4章 「アダプテーション」と「リプライズ」
1 舞台と映画 アダプテーション
《サウンド・オブ・ミュージック》のアダプテーション
オープニング~〈サウンド・オブ・ミュージック〉
〈私のお気に入り〉と〈自信をもって〉
〈ド・レ・ミ〉の位置
〈ひとりぼっちの羊飼い〉、〈私のお気に入り〉
〈エーデルワイス〉
2 舞台と映画(2) 《ウェスト・サイド物語》の機能の変化
(1)舞台版(1957)
(2)映画版(ワイズ監督、1961)
(3)映画版(スピルバーグ監督、2021)
3 リプライズの機能
《王様と私》〈アイ・ウィスル・ア・ハッピー・チューン〉、〈ハロー・ヤング・ラヴァーズ〉
《ウェスト・サイド物語》〈トゥナイト〉
リプライズのプロット化《キャッツ》〈メモリー〉
《ウィキッド》〈だれも悪人のことを嘆かない〉
〈だれも悪人のことを嘆かない〉(リプライズ)
まとめ
第5章 せりふと歌詞
1 言葉が意味するもの 「せりふ」と「歌詞」
せりふ
ト書き
象徴的な位置
2 詩のリズムと音楽
リズムの原則
詩行としてのリズム
(1)イアンブス格(○●)
(2)トロカエウス格(●〇)
(3)アナパエストス格(〇〇●)
(4)ダクテュロス格(●〇〇)
3 リズムの混合
《レ・ミゼラブル》の〈民衆の歌〉
第6章 音楽の役割
1 音楽の「テイスト」
楽団の位置
「AABA形式」とミュージカル・ナンバー
「形式」のヴァリエーション――『トップ・ハット』〈イズント・ディス・ア・ラヴリィ・デイ?〉
2 「クラシック音楽」の語り口
オーケストレーター
ライトモティーフ
《ウェスト・サイド物語》の「ライトモティーフ」
民族音楽がしめす「物語の舞台」
3 キャラクターとしての「音楽」
イエスもモーツァルトもロックを歌う
アンチテーゼとしてのポップス
ジュークボックス・ミュージカル
ノスタルジーとしてのジュークボックス・ミュージカル
エピローグ 「きらめき」の構造
きらめきの正体
歌い、踊ること
「ユニティ」による「肯定」
「ユニティ」による疎外
フィナーレ
「わたしたちは自分の庭を育てよう」
あとがき
引用・参考文献
索引