ヴィヴァルディの陰でひっそりと忘れ去られていた女性オルガン奏者ルチエッタの物語。18世紀ヴェネツィアのピエタ慈善院(捨子養育院)で育ち、音楽家としての才能を開花させたひとりの女性の生涯が、かすかな史実とたくみな想像力によってリアルに浮かび上がる。
あらすじ
1677年のある夜、生まれたばかりのルチエッタはピエタ孤児慈善院の「スカフェッタ(捨子収容台)」に捨てられた。1年後、アントニオ・ヴィヴァルディがヴァイオン奏者で理髪師の父の下に早産で生まれる。後に秀でたオルガン奏者となるルチエッタの人生は、数多くの傑作を世に送り出したヴェネツィアの音楽家ヴィヴァルディの人生と絡み合う。実在した二人の鏡像をなす人生を本書は語る。ルチエッタが孤児として閉鎖的で過酷な環境に育ち、優れた音楽家となる訓練を受ける一方、身体の弱いアントニオは司祭となり、高名なヴァイオリン奏者、作曲家となる。時が経つにつれ若きマエストロ、ヴィルトゥオーゾ、先進的作曲家であるアントニオの存在がルチエッタの貧しい日々を明るく照らし出す。才能溢れる彼女のオルガンが奏でる彼の革新的和声の音楽。だが、彼女は過酷な環境下で失明し、ヴィヴァルディがヴェネツィアを去った後、密やかに憂鬱な人生の幕切れを迎える。