歌舞伎、日本舞踊、地唄、小道具職人、顔師―。
伝統芸能の世界を主な舞台に、芸という魔物に魅入られた人々の執念と孤独、家族や師弟の愛憎、そして世代を超えて受け継がれる技術と想いを鮮烈に描き出した全6編。
【収録作品】
「地唄」:渡米を決意した娘と、勘当した盲目の地唄名人である父。芸で繋がれた二人が、琴と三味線の音色に託した最後の情念とは……。
「キリクビ」:歌舞伎の"切首"を彫り続ける老職人。途絶えゆく伝統と時代の波のなか、彼が最後にたどり着く境地。
「まっしろけのけ」:酒浸りの老顔師のもとへ通う女子大生。白粉の下に秘められた職人技を通して、彼女の心へ静かに手渡されるもの。
「ぶちいぬ」:舞踊家に長年仕えてきた32歳の女性使用人。人生の岐路に立たされた彼女が、葛藤の果てに選んだ答えとは―。
「帯」:若さに固執して「藤娘」を舞う女将。華やかな舞台の真っ最中、彼女を襲ったあまりにも残酷なアクシデント。
「線と空間」:近代的な高層ビルの国際電話交換所。目に見えない線でつながる世界の中で、孤立し揺れ動く女性たちのゆくえ。
自身も古典芸能を深く愛した有吉佐和子だからこそ描けた、舞台裏の息遣いと、芸という魔物に命を捧げた者たちの壮絶な生き様。
「消えゆく技をどう継承するのか」「時代の波の中で、人は何を抱いて生きるのか」―。
華やかな舞台の影に潜む、美しくも残酷な人間の業を描き切った不朽の名作。