ジブチは日本人にとって遠い国である。アフリカのどこかにあることは知っていても、それが紅海の入口に位置し、アラビア半島と向かい合い、スエズ運河へと続く海上交通路の要にあることまで思い浮かべる人は多くない。あるいは日本の自衛隊が唯一、活動拠点を置く国としてジブチの名を記憶している人もいるかもしれないが、ジブチにどのような歴史や国家運営の仕組みがあるのかを知っている人はあまりいないと思われる。
ジブチは紅海、アデン湾、インド洋を結ぶ海上交通の結節点にあり、現在のジブチ経済を支えているのは、まさにこの地理的条件を利用した港湾と物流である。こうした地理的条件は軍事面でも大きな価値を持ち、ジブチには日本を含む複数の国が軍事拠点を置いていて、外国軍基地の存在も国家運営を支える資源として利用している「基地依存国家」でもある。
「基地依存国家」といっても単に外国軍に頼る弱い国家という意味ではない。各国の異なる利害を受け入れ、それぞれとの関係を維持しながら自国の存在価値を高めてきたのである。
ジブチを知ることは遠いアフリカの一つの小国への理解にとどまらない。この国の歩みをたどることで、海上交通の安全、地域紛争、大国間競争、日本の対外関与が互いに無関係ではなく、一つの地点で交差していることが見えてくる。
初代駐ジブチ大使の著者がジブチの過去、現在、これからを紐解いていく。